与謝蕪村:水墨画「蜀桟道図」 92年ぶりに見つかる
毎日新聞 2014年09月24日 19時03分(最終更新 09月24日 20時00分)
江戸時代中期の俳人で画家の与謝蕪村(1716〜83年)が描いた水墨画「蜀桟道図(しょくさんどうず)」が92年ぶりに見つかった。鑑定した美術館「MIHO MUSEUM」(滋賀県甲賀市)が24日、発表した。1922年に発刊された「蕪村画集」にモノクロ写真が掲載されて以降、所在が分からなくなり、「幻の名作」と言われていた。
作品は長さ167.5センチ、幅98.9センチ。中国四川省北部に通じる険しい山や渓谷に造られた「蜀桟道」を旅人が行き交う様子が墨や岩絵の具で絹地に描かれ、蕪村が晩年に用いた雅号「謝寅(しゃいん)」という署名もある。
最近になってシンガポールの会社が所蔵しているという情報が寄せられ、今年5月に同美術館の岡田秀之学芸員が鑑定。山や樹木の精密な描き方や人物のユーモラスな表情などから蕪村の作品と確認した。安永7(1778)年、依頼人に蜀桟道図を送ったとする蕪村の手紙の写しが残っており、この年に完成させたとみられる。
藤田真一・関西大教授(国文学)は「冬の中国の自然の描き方や、旅人の表情に蕪村の作品の特徴がよく出ている。晩年の代表作で、蕪村についての研究が一層進むだろう」と話している。
来年3月18日から東京都港区のサントリー美術館で、7月4日からMIHO MUSEUMで開かれる特別展「生誕三百年 同い年の天才絵師 若冲と蕪村」で展示される。【村松洋】