株式会社JALカード |
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さらなる顧客サービスの向上をめざして50万ステップの基幹システムをオープン化 |
Highlights
Business
株式会社JALカードは、日本航空の常顧客のために設立されたクレジットカード企業。フライトやショッピングでのマイルのためやすさが評判を呼び、1984年の創業以降、会員数は右肩上がりの伸びを続け、現在では約120万人。
Challenge
メインフレームベースの基幹システムは、クレジットカードのサービス種類が増えるごとに追加開発を重ねたために業務処理が複雑になったり、周辺システムの導入でデータが分散するといった問題点が浮上した。またシステム利用コストが固定できず、専用端末は操作性に乏しいという根本的なデメリットもあった。
Solution
顧客サービスの向上、データ統合、業務の簡素化、操作性の向上をめざして基幹システムの半分をダウンサイジング。新会員系システムのプログラムの8割を占めるバッチ処理開発にCOBOLを選択。オープン系COBOL製品として業界標準的な位置づけにあり、システムインテグレータであるTISに利用実績があったことからMicro Focus Server Expressが採用された。
Results
新会員系システムは、抜本的に改善された操作性のよさがエンドユーザーから高い評価を呼ぶとともに、バッチ処理を中心に飛躍的にスピードが向上し、同社の今後のサービス開発やビジネスの成長に備える基盤が整った。
マイルがたまるクレジットカードとして、顧客から高い人気を誇るJALカードは、長年利用してきたメインフレームベースの基幹システムの半分をオープン系システムにダウンサイジングすることを決断。そこには、顧客サービスの向上、データ統合、業務の簡素化、操作性の向上といった目的がありました。
業務を抜本的に見直した上で開発された新しい3階層システムに選ばれた言語はCOBOL&Java。プログラムの8割にあたるバッチ処理の開発に、Micro Focus Server Expressが採用されました。システム開発は順調に進み、2003年9月に本格稼動スタート。新システムは同社に顧客向けの新たなサービスを提供するための基盤を提供しています。
●The company
空の旅の楽しみの一つに、マイレージプログラムがあるといっても過言ではないでしょう。利用すればするほどマイルが増え、たまったマイルでまた新しい旅へ。その楽しい好循環が、世界を舞台に活躍するビジネスマンや旅行愛好家の間で大きな人気を集めています。
株式会社JALカードは、日本航空の常顧客のために設立されたクレジットカード企業です。フライトやショッピングでのマイルのためやすさが評判を呼び、1984年の創業以降、会員数は右肩上がりの伸びを続け、現在では約120万人になりました。
同社はまた、きめこまやかなCRM(Customer Relationship Management)を展開することでも知られています。JALカードが顧客にメインカードとして利用されるエアライン系クレジットカードとして長くナンバーワンの地位を誇っているのも、こうした活動が高く評価されているからでしょう。
●The challenge
JALカードはメインフレームベースで動く大きく2つの基幹システムを有しています。1つは会員情報を管理する会員系システム、もう1つはクレジット利用の請求管理を行う債権系システムです。
このシステムが本格稼動し始めたのは1992年。当初は扱いが自社カードだけだったのですが、JCBやVISA、ダイナースなどとの提携で次第にカードの種類が増え、そのたびに追加開発を重ねてきました。また入会受付やコールセンター業務など周辺業務に必要なサーバも導入。こうしたことによって、業務の処理がしだいに複雑になり、データが分散してしまうという問題点が生じ始めたのです。
株式会社JALカード
執行役員 システム企画部長
鴻池章寛氏
なによりメインフレームシステムで他社との共用機であるために、システム利用コストを固定化できず、専用端末は画面IDなどを把握していなければ操作できないという、根本的なデメリットもありました。
それとは別に、JALカードならではの顧客ニーズへの対応という側面もありました。これまでは一人の顧客に対して発行するカードは一枚でした。しかし、同社の場合、たとえばVISAと提携したJALカード、ダイナースと提携したJALカード、その両方を望まれる顧客も多いのです。こうしたことから、同社ではカードの重複発行を開始しています。
このように多様化する顧客ニーズやこれから主流になるとみられるICチップ搭載の新型カード発行などに迅速に対応していくためにも、必要なのは新システムの開発でした。一度業務全体を抜本的に見直し、発行するカードの体系をきちんと整理した上で、ダウンサイジングを実行しようということになったのです。目的は4つ。顧客サービスの向上、データ統合、システム費用の固定化、そして操作性の向上です。
「顧客の愛顧により、当社のクレジットカード事業は順調に推移していますが、だからこそ今のうちに、新しい取り組みにチャレンジできる堅牢なシステム基盤作りが不可欠だと判断しました」株式会社JALカード 執行役員 システム企画部長 鴻池章寛氏は、そう語ります。
基幹システムは全部で100万ステップもある大規模システムであることから、まずは第一弾として会員系システムのダウンサイジングに着手することになりました。
●The solution
TIS株式会社
金融・カード事業統括本部
金融・カード第2事業部
ファイナンシャルシステム第7部
統括マネジャー 早坂直樹氏
新システムは、UNIXサーバをベースに、フロントエンドにWebブラウザを使用した3階層システムで開発されることになりました。ここで、JALカードのシステムインテグレータを務めるTIS株式会社は、会員系システムの80%を占めるバッチ処理部分をCOBOLで、オンライン処理部分をJavaで開発することに決めたのです。なぜCOBOL&Javaだったのでしょう? 今回はゼロからの開発ではありましたが、バッチ処理部分は踏襲するところも多かったので、旧システムを理解していなければ開発は進められません。ところが旧システムは年数が経っているため仕様書がそろっておらず、ソースそのものを読む必要がありました。それならCOBOLの技術者がそれを読んで、COBOLで開発するのが一番確かだと考えたのです。システム選定時は2001年。まだJavaですべての処理を行う基幹業務システムは非常に少なく、開発に不安を抱いたことも確かでした。
TISが今回の開発にMicro Focus Server ExpressをCOBOL統合開発環境として選択したのは、それが業界標準だったからでした。
TIS株式会社 金融・カード事業統括本部 金融・カード第2事業部 ファイナンシャルシステム第7部 統括マネジャー 早坂直樹氏は次のように語ります。
「COBOL製品はハードウェアベンダから販売されているものが多く、それらはどうしてもハードウェアに依存した部分を有しています。Micro Focus Server Expressはそうしたところがなく、標準を意識して開発された製品だと思いました。また、別の開発案件で過去に採用した実績があり、信頼できる製品だったということも大きな理由です」
これは結果論なのですが、COBOLを開発言語に選んだことで、質の高い外部エンジニアの確保は非常に容易だったそうです。
●The result
株式会社JALカード
システム企画部
根本麻美氏
JALカードの新会員系システムは、綿密なプロジェクト管理のもと、予定どおり2003年9月に本格稼動を果たしました。
Webブラウザからすべての操作が可能になり、エンドユーザーから高い評価を得ています。その声を代弁するのは、株式会社JALカード システム企画部 根本麻美氏です。
「以前のように画面IDを覚えなければシステムに触れないというようなことがなく、画面上のリンクをたどって直感的に操作できるため、業務効率は大幅に向上しました。旧システムに比べてレスポンスは落ちるかもと少し心配していたのですが、思った以上に迅速に結果が返ってくるので喜んでいます。旧システムはメインフレームベースであったことからサービス時間に制限があったのですが、24時間の照会が可能になりました。これも大きな利点の一つですね」
新会員系システムのバッチ処理は、旧システムよりかなり高速になりました。たとえばある日のTOTALバッチ処理時間は今まで7時間かかっていたものが3時間に。
TIS株式会社
金融・カード第1事業部
ビジネスシステム事業開発部
主任 茂手木隆文氏
「JALカードの会員数は増加の一途をたどっているので、処理に余裕ができたことにはこれからのシステムの成長を考えると大きな安心感があります」
と、早坂氏。
「オープン系サーバを基幹システムの中核とすることで、周辺業務を行うサーバとの間での連携も容易になりました。たとえば、従来は入会申込を行ったお客さまの情報はすぐにはコールセンターシステムには反映されず、ご不便をかけることもありました。しかし、もうそうしたこともなくなります。データベース・マーケティングの本格展開も可能になって、これからますます顧客サービスの質の向上に加速度をつけて取り組めると大きな期待を寄せています」と、鴻池氏は満足げです。
TISでは、Windows用のCOBOL開発環境であるMicro Focus Net Express、COBOL資産のリエンジニアリングツール Micro Focus Revolveも導入しています。TIS株式会社 金融・カード第1事業部 ビジネスシステム事業開発部 主任 茂手木隆文氏は、「今回の開発では、結果的にNet ExpressとRevolveはごく一部のみでの利用に留まりましたが、単にCOBOLコンパイラとしてのツールではなく開発支援ツールが充実している点も、Micro Focus製品を選定した理由です」とコメントしています。
COBOL&Javaの選択で、基幹システムのダウンサイジングを計画どおり成功させたJALカード。顧客に選ばれるクレジットカードとしての強みに、今後ますます拍車がかかりそうです。
Technical Keyword
メインフレームシステムからUNIXへのダウンサイジング
バッチ処理はCOBOL、オンライン処理はJavaで
ユーザープロフィール
本社:東京都品川区
設立:1984年10月
資本金:4億円
取扱高:7,460億円(2002年)
従業員数:500名
事業内容:クレジットカード業務、JALマイレージバンクの受託運営、通信販売業務他
URL:http://www.jalcard.co.jp/