アリババ(ティッカーシンボル:BABA)の引受幹事団が「グリーンシュー・オプションを行使した」と発表しました。

グリーンシュー・オプションとは「字余りで予定株数以上に売ってしまう」ことを許すことを指し、通常、売出株数の15%です。

アリババの場合、売出株数は3.2億株でした。これの1.15倍だと3.681億株ということになります。

なぜ余計に売り過ぎてしまうことを幹事に許すか? というと、若し上場後株価が公募価格を割り込みかけた場合、売り過ぎた15%分はちょうど空売りしたのと同じ効果が出るので(=ほんらい、無いモノまで売ってしまったのだから)、それを買い戻せば良いのです。

つまりグリーンシュー・オプションを行使するディールは主幹事の買い支えが必要ではなかったディールを指し、ホットディールを意味します。

逆にグリーンシュー・オプションを行使しないディールは主幹事が上場後買い支え、結果として売り越した15%分を買い戻してしまった、不人気なディールを意味します。

だから今回、アリババの幹事団が「グリーンシュー・オプションを行使しました」と宣言したということは、翻訳すると「もう買い支えの必要はアリマセン」と言っているのと同じなのです。

さて、3.681億株が68ドルで売り出されたので、調達金額は250億ドルになります。これは過去最大のIPOです。

あとプロスペクタスを読むと、アンダーライティング・ディスカウント&コミッションは81.6¢でした。すると値決め価格が68ドルなので、グロス・スプレッドは1.2%ということになります。これが引受幹事団に入る駄賃です。グリーンシューを加味して、ちょうど3億ドルになります。

いま小さいディールならグロス・スプレッドは7%と決まっているので、この1.2%という手数料は、とてもシビアです。

アリババ経営陣が、投資銀行に対してハード・バーゲンをした形跡がアリアリというわけです。

さて、そのアリババですが、90ドル以上の水準で取引が始まってしまったので(安く仕入れたいな)と思っていた、僕を含めた投資家は、アテが外れてしまったことになります。

やっぱり、うまい話は、そうそう転がっていないというわけです。

でも気を取り直して考えてみれば「90ドルくらいまでなら、払って良い」という声は、売出目論見書が出た当初から皆が口にしていたコトであって、その意味では「ごっつあんです!」というラッキーなシナリオが消えただけで、今の水準がフェアバリューであることには変わりはないと思うのです。

よく「戦争は、弾丸が飛び交い始めた瞬間に、当初計画が狂い、新しい作戦を練り直すのが常だ」と言われます。アリババの場合も、売出価格の68ドルに、いつまでもこだわっていても仕方ないと思うのです。

主幹事が「グリーンシューをエクササイズしました」と宣言した後で株価が公募価格を割れることは稀です。

You are on your own.(ここからは、一人で行きなさい)


と主幹事が言っているということは、「もう大丈夫です。幹事の役目は全うしました」という意味であり、株価がプライス・ディスカバリー(=自然なおさまりどころを模索すること)の過程を終えたことを意味するのです。

いま、バリュエーションの話をすると:

2014年3月〆の12ヵ月 $1.50(実績)
2015年3月〆の12ヵ月 $2.24(予想)
2016年3月〆の12ヵ月 $2.86(予想)


ですから現在の株価約91ドルを当てはめれば2016年3月のEPSに基づいて株価収益率は31.8倍になるわけです。これは同社のボトムライン(=EPS)成長率(28%)にほぼ一致する水準です。