アマゾン:学生「値引き」を考える

毎日新聞 2014年09月22日 10時07分(最終更新 09月22日 11時42分)

アマゾンとの取次を担う日販に違約金請求したことを記者会見で発表した中小出版社の社長たち=東京都文京区で2014年8月6日、須藤唯哉撮影
アマゾンとの取次を担う日販に違約金請求したことを記者会見で発表した中小出版社の社長たち=東京都文京区で2014年8月6日、須藤唯哉撮影
書店店舗数の推移(最近10年間)
書店店舗数の推移(最近10年間)

 一方、10年以降、急速に普及している電子書籍は再販の対象外だ。有料配信しているインターネット上の書店(ネット書店)によって、値引きしたり、ポイント還元サービスを導入したりしているケースもある。同じ作品でも、印刷された本か電子かの違いで差額が生じている状況だ。

 日本出版者協議会は今年8月、電子書籍にも再販を適用するよう公取委に要望したが、公取委は「物」として本の形がなく、ネット上で「情報」として流通している電子書籍は、適用外だとの見解を示した。

 そんな中、電子書籍と町の書店(リアル書店)の強みを融合させた取り組みも始まった。東京の三省堂書店神保町本店などで期間限定で販売されている電子書籍カード「BooCa(ブッカ)」だ。

 電子書籍の概要を記したカードを書店に陳列。客はそれを見て、気に入った書籍のカードを購入する仕組みだ。カードに印字されたコードをネットの専用ページに入力すれば、電子書籍をダウンロードできる。ネット書店の利便性に慣れた読者にも、見知らぬ本との偶然の出会いのあるリアル書店の利点に気づいてもらう試みだ。

 ◇欧米でも衝突激化 「本は文化財」認識浸透

 海外でもアマゾンと出版・書店業界との衝突が目立っている。

 ドイツの現地報道によると、アマゾンは大手出版グループと電子書籍の仕入れ条件をめぐって対立。5月ごろからアマゾンがこの出版社グループの本の発送を遅らせた。出版社や書店などでつくるドイツ書籍業協会は6月「アマゾンは市場支配力を背景に強引に好条件を獲得しようとしている」として、カルテル法違反の訴状を提出した。ドイツの作家や本の著者ら1188人が8月、アマゾンに対する抗議文に署名した。

 フランスでは6月、アマゾンによる無料配送を禁じる「反アマゾン法」が上下両院で可決された。

 かつて紀伊国屋書店で洋書を長く担当し、欧州の出版事情に詳しい伊藤暢章(のぶあき)さんは「ドイツやフランスでは『本は文化財』という考え方があって出版物の再販制を設けている。アマゾンが製造から販売までの流通構造を破壊する危険があると警戒しているのだろう」と話す。

 出版物の再販制のない米国でも、アマゾンは電子書籍の取引条件をめぐって大手出版社グループと対立。本の発送を遅らせた。有名作家ら900人以上が8月、アマゾンに抗議する意見広告をニューヨーク・タイムズ紙に掲載した。

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