アマゾン:学生「値引き」を考える
毎日新聞 2014年09月22日 10時07分(最終更新 09月22日 11時42分)
書店業界では、中小出版社に対する支援が広がっている。00年に全国に約2万1000店あった書店は、現在約1万4000店。アマゾンのシェアが大きくなると、経営が悪化して廃業を余儀なくされる書店がさらに増える恐れがあるからだ。首都圏で店舗を展開する大手書店「有隣堂」(横浜市)は6月、出荷停止した出版社の書籍を集めたフェアを開催。さらに東京都内の書店が加盟する東京都書店商業組合は9月、日本出版者協議会の主張を支持する声明文を発表し「(協議会の)会員5社が出荷停止を行い、身を削ってまでも再販制度を守るとの強い意志と行動に敬意を表する」と賛同した。
一方、大手出版社に表立った動きはない。出版不況の中で、ネット書店は重要な収入源になっており、対抗する余力がない。アマゾンで販売できなくなれば、著作者が不満を抱くことへの懸念もありそうだ。
アマゾンの動きを冷静に捉える見方もある。フリーライターの永江朗さんは「日本の書籍の5冊に1冊はアマゾンが売る。言論界で1社が大きな力を持つことに警戒する必要はある」としたうえで「アマゾンに学ぶところは多い。建前であったとしても顧客の利便性第一の姿勢は、日本の出版界に欠けている。書店に並ぶ本はほとんどが最近出たものだが、アマゾンでは過去に出た本も扱う。アマゾンの成功から、日本の業界が何を学んで変えていくかが問われる」と話す。
アマゾンジャパンは毎日新聞の取材に「(ポイント還元サービスで)学生の皆様に少しでも本を身近に感じていただき、新しい本の発見や著者との出会いの機会を作る一助となれば」と説明。書店業界のシェアやサービスのコストについてはコメントしなかった。
◇電子とリアル、融合
本などの出版物は文化水準の維持に必要だとして再販が適用されているが、制度の是非をめぐる論議も長い間続けられてきた。
再販制度では、メーカーが定価を決め、小売業者に定価(販売価格)販売を求めることができる。独占禁止法で原則として禁じられているが、書籍や雑誌、新聞、音楽CDなどは著作権や文化の保護の観点から、例外として認められている。
市場原理や、安価に入手したいという消費者ニーズから見直しを求める声もあるが、公正取引委員会は01年「再販制度が廃止されると出版物の多様性が失われる」などとして、当面維持することにした。