げどう【外道】とは
①〘仏〙 仏教以外の思想・宗教。また,その信者。特に,釈迦の同時代に存在した教説をさす。六師外道や九十五種外道など。
②真理に反した説。また,それを説く人。邪道。
③人に災厄をもたらすもの。悪魔。また,邪悪の相を表した仮面など。 「金毘羅童子と作て,-諸魔を調伏し/読本・弓張月 拾遺」
④人をののしる言葉。 「悪魔-め,人の陰徳のさまたげをして/滑稽本・七偏人」
⑤釣りで,目的とする種類の魚以外に釣れた魚。
(三省堂 大辞林 第三版より)
『外道釣り師Tの「海の上ではイイ男」』とは、日頃は都内のIT企業に勤める文字通りの外道である外道釣り師Tが、ズブの素人である我々を引き連れて、目的とする種類以外の魚を釣りに行くという不定期連載である。
これまでの2回(第1回・第2回)は外道釣り師Tの後ろ姿の写真から始めていたのだが、あの写真が一番イラッとくるというお声を多数(本当に多数)いただき、今回は美しい海の景色から始めてみた。今回はカメラに詳しい2人の方が大半の写真を撮ってくださった。たまに出てくる、見るからにキレイじゃないのが自分の写真。申し訳ない。
舞台となったのは、第2回と同じく葉山。この港、ネコがたくさんいるのだが、前回同様、外道釣り師Tが現場に到着すると、早速ネコさんたちもイラッときている。
その1
その2
左の猫の前足を見ていただきたい。完全にヤル気である。これだけ動物に嫌われる人もそうはいない。外道釣り師T、本当に外道だ。
ちなみにカラスも外道釣り師Tが嫌いなのか、わざわざ様子を見に来ていた。
あれが正真正銘の外道か、という感じで首を傾げている。
そして、肝心のお目当ての魚だが、今回はなんとマグロである。「いや、もう8月からがシーズンなの。去年も俺は釣り上げてるから」と語るのは外道釣り師T。いちいち自慢話を入れないと気が済まないのはこの男のデフォルトだ。外道極まりない。
それだけではない。このマグロを釣り上げた時の満面の笑みを浮かべる写真が外道釣り師のすべてのSNSのプロフィール画像で使われている。見るのも忌々しい得意気な様子を、こちらは何度も見せられるという、そんな塩梅になっている。下がその写真。
上着の水玉模様の外道さ加減にイラッときたのは、きっと私だけではないと信じている。
「去年、マグロを釣った時は最後の一投だったのよ」、大体において人の自慢話は止まらない。外道であればなおさらである。「もうね、今日は無理かなって、船長さんが帰ろうかって言ったんだけど、一投だけ投げさせてって入れたら、そこで釣れちゃったのよ」。
「諦めたら、そこで試合終了だよ」、安西先生が言うと感動する話を外道が語ると、ここまでゲスになるのはなぜなのか? 「末端価格でいったら、20~30万円くらいはいってただろうね」、最後に金の話をするのも忘れない。本当に外道だ。
基本的に筆者のわたくしは釣りに全然詳しくないのだが、第1~2回を見てくださったなかに釣りに詳しい方がいらっしゃたので、今回のマグロ釣りの仕掛けについて図解してくれと外道釣り師Tに頼んだところ、以下の画像が届いた。
……。
人間が外道だと絵も外道という典型である。ただ口だけはいっちょ前で、解説を頼んだところ以下のようなテキストが送られてきた。以下、全文コピペする。
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【タックル】
竿:アルファタックル
リール:ダイワ タナコンブル1000
【仕掛け】
天秤:カモシ天秤
ビシ:ダイワ シャベルビシ
道糸:PE8号 800M巻
ハリス:ナイロン 22号
針:ウルアDX 16号
針結び:フィンガーノット
【ポイント】
竿については、コマセをよく降ることができ、
かつファイト時に胴がしっかりとしている竿を選ぶと良い。
リールは、本来ドラグ性能の良いレバードラグ式が基本となるが、
ファイト時にやりとりが楽な電動リールも捨てがたい。
電動リールの場合、シマノ4000番以上、ダイワ750番以上で望みたいところ。
天秤は誘導が絶対におすすめ。
針の掛かりどころが良くても、ハリスの太さによっては
天秤が抵抗となりきれることもあるので、
やはり誘導がおすすめ。
しかしながら、船宿によっては使用禁止の所もあるので、
その場合は、天秤のハリス側のヨリモドシと天秤側を
細いラインで結んでおくと良い。
いざマグロが掛かった際は、先に細いハリスが切れるため
その後十分に誘導天秤の恩恵を受けることができる。
ハリスについては、マグロがかかった時にショックが吸収できる
ナイロンハリスがこだわり。
他にもメリットとして、太ハリスをしっかりと結ぶことができる。
デメリットとしては、仕掛けのバランスを考えないと、
伸び切れることや、長時間のファイトの場合、
マグロの側面で擦れて切れることもある。
針については、強度が高く比重の軽いハリが理想的。
今回使った針は強度61kgで、重さが1gと相模湾では理想的な針だと
個人的には思う。
このシリーズで金色があったらなお嬉しい。
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コピペここまで。
いわく、「十分に恩恵を受けることができる」「個人的には思う」「があったらなお嬉しい」、その文体から身体に沁みついた上目線を感じるのは自分だけだろうか。正直、内容については何を言っているのか、ほとんど分からないが、ただこの文章の書き手が外道極まりないことだけは伝わってくる。
外道釣り師Tの能書きはここまでにして、いよいよ海へ出発することに。まずは釣り船の代金のお支払である。
神秘を見出すかのように電卓をじっと見つめる外道釣り師T。どうやら参加者から釣り船代金を徴収することが楽しくてたまらないらしい。外道としか言いようがない。とにかく金についてはウルサイのが、この人間である。
そうしてようやく海に向かったのだが、この日の海はやや荒れ模様。
ちょっと波が高いのがお分かりいただけるだろうか。
にもかかわらず、これだけの数の船がマグロ目指して集まるのだ。
マグロへの情熱、すさまじや。そして、いよいよマグロ釣りがスタートである。マグロ釣りの基本的な流れは、ソナーでマグロを発見、そのポイントに船を移動、糸を落として釣りを開始、逃げてしまったらもう一度、というもの。だから1ヶ所にこれだけの船が集まってくることになる。
得意顔で糸を降ろす外道釣り師T。「俺は去年釣ってるんだよ」「お前らみたいな初心者どもとは違うんだよ」、そう背中で語るT。本当に外道だな、こやつは。
でも、釣れない。早朝から何度もマグロを追って、糸を垂らすも、全然釣れない。しかも、空はだんだん暗くなっていく。
「俺は去年釣ってるんだよ」と喚き続ける外道釣り師T。しかし、その時だった。
「かかった!」。船長の声が船全体に響き渡る。同行者の竿にマグロがかかったらしい。見に行くと、こんな感じ。
竿のしなり方がまったく違う。船長が竿を預かって、代わりに糸を巻き上げる。果たして本当にマグロは釣れるのか、と思ったら、
糸が切れた。。。
このレンタルの竿についていた糸がダメージを受けていた可能性もあり、PE12号がいともたやすく切られてしまったとのことで、もう少し太い糸であれば切れなかった可能性も。陸に上がった後、見せてもらった切れた糸はこんな感じ。
結局マグロがかかったのはこの1回のみ。その後は雨も降ってきて、外道釣り師Tもビショ濡れに。因果応報とはまさにこのこと。外道にふさわしい姿である。ちなみに、この雨で筆者のiPhoneは故障した。
結局このまま、この日の釣りは終了。マグロどころか、その外道も釣れなかった一行、去年釣り上げたと豪語していた外道釣り師Tも珍しく反省。
というわけで今回の「外道釣り師Tの海の上ではいい男」はここまで。外道釣り師なんて名乗っておきながら、外道も釣れず申し訳ありません。この通り、本人も反省しているので、次回はちゃんと外道を釣ってこようと思います。
今回の外道釣り師T、「外道」という単語の登場回数は41回でした。こちらも100回目指して、頑張ります!