ブログトップ 記事一覧 ログイン 無料ブログ開設

Chikirinの日記

2014-09-22 東浩紀さんと対談@ゲンロンカフェ

哲学者で作家の東浩紀さんからゲンロンカフェでの対談にお招きいただき、五反田に行ってきました。

f:id:Chikirin:20140921194338j:image:w200

(以下、クレジットのない写真はすべて、ちきりん撮影)


対談が午後 7時からだったので、直前になか卯で早めの夕食。ゲンロンの対談は延長されるのが常らしく、この日も 5時間近く話してました。

f:id:Chikirin:20140921194337j:image:w400


チケットは 120人分が完売。結果として立ち見の方もあったみたい。長丁場なのに申し訳なかったです。

f:id:Chikirin:20140921194342j:image:w450


東さんは今の日本の知識人が、若者や新しいモノを無批判に賞賛する傾向と、「歴史や海外の状況をきちんと見れば、そういう結論にはならない」とまっとうな意見を言うと、すぐ「日本に不満があるなら、お前が日本から出ていけばいいだろ」みたいな反論がくることに憤ってらっしゃいました。

f:id:Chikirin:20140921194346j:image:w500

(写真提供:ゲンロン)


そういえば、あたしもこの前「日本はおこちゃまの国」って書いたら、「地元の人しかいない小さな浜に行けば問題ない」的な、ズレまくった反論をたくさん受け取りました。

あのエントリで私が沖縄と比べてたのは、モルジブやタヒチの一泊 5万円くらいからのホテルのプールでありビーチなわけで、

沖縄がそういう場所とグローバル中流層(=インバウンド観光を推進したい自治体にとって、最もお金になる層)を取りあうつもりなら、こんなお子ちゃまの国では話にならないよ、と書いたわけなんですが、

「地元の浜に行けばいいのだ」みたいに言ってる人には、私が何を言ってるのか、想像もできないんだろうと思います。


f:id:Chikirin:20140921194341j:image:w400


なんだけど(ここからがあたしと東さんの違うところなんですが)、あたしは別にそういう反論にたいしても、あんまり頭にこないし、イライラもしません。ましてや絶望とか全くしない。

誰もがモルジブやタヒチに行けるわけじゃないし、外が見られなければ、そういう意見もでてくるだろうと思います。

あたしがそういうところに行けてるのは、単に恵まれてるからでもあり、ズレた意見にも、「あのね。海外のリゾートビートに行ったことないと、わかんないもんなんですよ」と、わざわざ言う気にはなれない。


f:id:Chikirin:20140921194347j:image:w500

(写真提供:ゲンロン)


そういえば、「旭川駅が立派すぎて驚いた」っていうエントリを書いたときも、「こんな悪口を言うためになら北海道に来るな!」みたいな意見があって、これも、東さんに対して「日本を批判するなら、日本を出て行け」って言う人がいるのと同じだなと思いました。

が、これもあたしはあまり気にならない、てか、「すごい(ワケのわかんない)人がいるよね」とは思うけど、そんなん、どこの世の中にも、いつの時代にもいて、イチイチ相手にしてられないので、無視すればいいだけ。

なんだけど、それも東さんにしてみれば「これってその先にあるのは、一切の批判を許さないファシズム的な世界である」ってことなのかもしれません。


f:id:Chikirin:20140921194343j:image:w400


ただ、今回、東さんの話を聞いて、「確かに知識人はそーじゃないといけないかもね」って思いました。

国の政策だったり在り方だったり、若い人や社会のトレンドだったりに、歴史の事実とか他国の事例もきちんと踏まえた上で、「ほらね、違うでしょ」って言ってくれる人が社会に一定数、存在することは大事だよね。

たとえば私みたいな一般ピープルの場合、自分が若い頃にオヤジから「お前ら若いもんは、なんもわかってない!」みたいに言われて、たしかにそーかもしれないけど超うざかった。だから、自分がオヤジ(おばさん)になった時に、同じ事を言いたくないって思ってる。それは媚びてるとかではなく、「自分がイヤだったことは人にしたくない」っていうだけの話なんだけど、

「知識人はそれではダメなのだ」という東さんの意見はよくわかる。

なので、知識人の人はがんばってください。


f:id:Chikirin:20140921194349j:image:w500

(写真提供:ゲンロン)


それらも含め、東さんの話は全体に難しく、あたしにはついて行けない部分も多々ありました。「公共の概念」とかは、哲学的・思想的には大事なのかもだけど、あたしには全然わからない。


f:id:Chikirin:20140921194340j:image:w300


たとえばクールジャパン絡みの話しで、日本のカルチャーは、基本は逆張りなのだっていうのは、私もそう思います。

ちなみに「逆張り」は東さんが使った言葉で、私の理解では、ディズニーやらハリウッド的なグローバルメジャーにたいして、エスニシティを売りにしたニッチで熱狂的なファンをもつ周辺的なポジショニングのエンタメ、って感じかな。結果として、ハリウッドに対するフランス映画が陥ったみたいなポジションね。

そこまではわかるのだけど、私には東さんのいう「キティちゃんとポケモンはグローバルキャラクターになり得るけど、ドラえもんは無理」っていう違いはよくわからなかった。

私の理解が正しければ、東さん的にはアストロボーイ(アトム)やウルトラマンもダメってことなんだと思うけど、あたしは、ドラえもんもウルトラマンも、キティちゃんやポケモンみたいになれるし、ミッキーに勝てるとは言わないけど(あれはもう圧倒的)、その次のポジションには十分にイケルでしょって思ってるので。


f:id:Chikirin:20140921194336j:image:w500

(写真提供:ゲンロン)


あと驚いたのは、東さんはすごくお金が欲しいと言ってて、「何に使うんですか?」「いくら欲しいんですか?」って聞いたら、東京に自社ビルが買えるくらい( 10億円くらい)って答えだったこと。

自社ビルが欲しいなんていう人には初めて会ったので驚いたけど、おそらく資産的価値というより、完全に自由になれるスペースが手に入れたいって意味なのかなと思いました。

まあ確かに(例はよくないし、ましてやゲンロンがそうだという気は無いけど)山口組もオウムも過激派も、権力(←国家であれ大衆の塊であれ)との対決を考える人はたいてい、土地を含めた所有権を確保しようとするよね。


f:id:Chikirin:20140921194344j:image:w350


それと、日本は年収 400万円から 800万円くらいの人には住みやすいけど、それを超えたあたり(収入 1000万円から 3000万円くらい)の人の存在感がないとか、

その層の人の旅行記も全然なくて、ちきりんの書いてる旅行の話は(例外的に、その層の旅行の話なので)珍しい、みたいな話がでました。


確かにそうですね。この層(収入 1000万円から 3000万円くらいの人)は、ツイッターやブログで旅行や生活の話を書くと、変な人が寄ってきてとても大変なので、たいていフェースブックに書いてます。だから、そのコミュニティ外の人には見えない。

その上、社会がこの層を無視してるのと同じように、その層も、半身、この国から逃げ出してる。みんな、子供の教育をこの国の制度に任せてないんだもん。だからお互い様って感じな気もします。

そして、あたしは「それはそれでいーじゃん。国も本気で困ったらなんか対策するんでしょ」と思ってるくらいだけど、知識人であり哲学者である東さんが、それに危機感を覚えるというのは理解できます。


f:id:Chikirin:20140921194335j:image:w500

(写真提供:ゲンロン)


全体に東さんは、いろいろ憤っていらっしゃるように思えました。もはやそういう芸なのか、ホントに憤ってるのか、よくわからないレベルで。

そういえば、今回の対談に限って言えば、来てくださった方の多くはゲンロン友の会の会員(常連さん)ではなかったらしく、質問タイムは移民政策とか英語の必要性とか、かなりプラクティカルな話でした。

結局あたしは、そういう実務的な話ならいくらでも答えられるけど、「公共性とは」みたいな話になると全くアタマがついていかず、東さんには申し訳なかったなと思ってます。


4時間も話した後、まだ飲み会があって、津田大介さんもいらしてました。

f:id:Chikirin:20140921194348j:image:w500

(写真提供:ゲンロン)


最後はゲンロンカフェの壁に記念のサインもさせていただきました。

f:id:Chikirin:20140921194350j:image:w500

(写真提供:ゲンロン)


長かったけど、楽しかったです。

そんじゃーね!



東さんの新刊、旅の本なのですが、あたしのと読み比べると、哲学者と実務者の視点の違いがよくわかると思います。下記リンクはどちらもキンドル版

弱いつながり 検索ワードを探す旅
幻冬舎 (2014-08-01)
売り上げランキング: 57


社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう! (だいわ文庫)
大和書房 (2013-05-31)
売り上げランキング: 1,937



 .