黒く染まるシリア ─ 活動家が語る「イスラム国」支配地の実態
AFP=時事 9月22日(月)11時1分配信
【AFP=時事】イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic State、IS)」が支配するシリア国内の地域では、何もかもが黒い──男性のターバンや、女性のベール、そしてパスポートでさえも。
【図解】過激派組織「イスラム国」の勢力図
「そこら中にイスラム国の黒い旗があふれている。女性たちは頭からつま先まで全身を黒いブルカで覆い、父親か兄弟、夫の付き添いがなければ家から出られない」。インターネットを通じてAFPの取材に応じたシリア北部ラッカ(Raqa)県の活動家、アブ・ユセフ(Abu Yusef)氏はこう語った。イスラム国のパスポートの色を尋ねると、ユセフ氏は笑って「黒だ」と答えた。
イスラム国の支配は生活の全てにおよび、男性と女性はそれぞれ別の治安部隊の管轄下に置かれている。
ユセフ氏によると、女性戦闘員部隊「ハンサ(Khansaa)」は、路上で女性を制止し、尋問や検査を行う権限を持つ。同氏は「男性に対してはヘスベ(Hesbeh)と呼ばれる部隊が、ダーイシュ(Daesh、イスラム国のアラビア語名称の頭字語)版のイスラム法(シャリア)を執行している」と述べた。
さらに、イスラム国には教育、保健、水道、電気、宗教、防衛など「思いつく限りのあらゆるものを管轄する省庁」が存在するという。これらの省庁はイスラム国が占拠した政府庁舎を拠点としている。
教育は厳格なイスラム法に基づき、ラッカには若者向けの軍事訓練キャンプが設置された。「消費者保護当局までも存在する」という。
■コーヒーは戦闘員が独占
ラッカの活動家たちはこれまで、嗜好(しこう)品や娯楽はイスラム国の戦闘員専用とされ、一般市民の利用は禁じられていると頻繁に訴えてきた。活動家らはネットに戦闘員で満員のラッカのコーヒーショップの写真を投稿し、非戦闘員は憩の場の利用が禁じられていると苦言を呈している。
アラブ諸国では街の風景としておなじみのコーヒーショップだが、地元住民らによるイスラム国侵攻阻止の努力も失敗に終わったデリゾール(Deir Ezzor)で現在も営業しているコーヒーショップは一つもない。
「ここでは楽しみや面白いことは、何一つ認められていない」と、活動家のラヤン・フラティ(Rayan al-Furati)氏(仮名)はネットを通じたAFPの取材に語った。「喫煙はおろか、たばこを売ることさえ想像できない。全身をベールで覆っていない女性を目にすることもあり得ない」
毎日、イスラム教の礼拝で祈祷を主導するムアッジンが祈りの時刻を告げると、みな店を閉めてモスクへ向かう。さもなければ身柄を拘束されるからだ。
しかし、イスラム国の戦闘員たちにとっては、シリアのイスラム国支配地域での生活は心地よいものだ。その理由は彼らが受け取る報酬などの恩恵だけではない。
ラッカを拠点とする活動家で、身元の特定を防ぐため仮名でインターネット取材に応じたフラート・ワファ(Furat al-Wafaa)氏によれば、イスラム国の最下級幹部の報酬は月300ドル(約3万3000円)。「現状からすれば、かなりの額だ」という。
だが、イスラム国の寛大さは支配下に置かれた人々までには及ばないとワファ氏は言う。「ダーイシュは本物の国家ではない。仲間には望むものは全て与えるが、ほかの市民たちは、その対象とならない」
ワファ氏はイスラム国を「恐怖を通じて人々を支配するマフィア」に例える。「市民は空腹から、イスラム国の構成員にならねばならない状況に追い込まれる。まともな給料を得るには、それしか手段がないからだ」
さらにイスラム国は市民から税の徴収も行っている。「貧しすぎて支払いができない市民でさえも逃れられない。だからみなイスラム国に加わる。人々には飢えて死ぬか、脅しの中でイスラム国の構成員となるかの選択肢しかない」(ワファ氏)。4年近く続く内戦により困窮した店主らは、月約60ドル(約6500円)の税金をイスラム国に納めているという。
■まるで「入植者による占領」
一方、デリゾールのフラティ氏はイスラム国を、元々住んでいた人々を立ち退かせて移り住む入植運動に例える。「入植者によるイスラエルのパレスチナ占領と同じことが、ここでも起きている」
イスラム国の戦闘員には外国人もいるという。「米国人の戦闘員もいる。彼らは、かつて私たちが住んでいた場所に家族とともに住んでいる」
フラティ氏は、イスラム国による迫害を恐れてデリゾールを脱出した数万人の市民の一人。現在もデリゾールに残る家族の身を案じ、取材には仮名を使い応じた。【翻訳編集】 AFPBB News
最終更新:9月22日(月)15時28分
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