イラク:米の「イスラム国」空爆拡大 シーア派から反発

毎日新聞 2014年09月22日 10時01分(最終更新 09月22日 12時09分)

 【カイロ秋山信一】イスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」の侵攻が続くイラクで、イスラム国に対する米軍の空爆拡大について、アバディ首相の支持基盤であるシーア派から反発が起きている。過去に反米闘争に関わっていたシーア派民兵組織が相次いで米軍との協力を拒絶。イラク政府軍と米軍との共闘体制に暗い影を落としている。

 「犯罪者(イスラム国)に対抗するためであっても、別の犯罪者(米国)と協力することはイスラム教に反する」。反米的なシーア派指導者ムクタダ・サドル師は15日、米国のイラク介入を非難する声明を発表した。シーア派民兵に戦闘地域からの撤収を求め、政府軍にも米軍との協力をやめるよう要求。シーア派民兵組織「ヒズボラ旅団」も16日、米軍との協力に否定的な見解を示した。

 サドル師の影響下にあるマフディ軍やヒズボラ旅団など有力シーア派民兵組織は、2003年のイラク戦争でフセイン政権を打倒した米軍を「占領者」と非難し、反米闘争を続けてきた。米軍の掃討などで弱体化した時期もあったが、シーア派主導のマリキ前政権下で一部が政府軍や警察に入り込むなど軍事的な影響力は根強い。

 イスラム国が今年6月にイラクで攻勢を強め、バグダッド周辺のシーア派居住地域に迫ると、同派は政府軍やクルド人治安部隊と共闘。米国が8月に限定的空爆を開始した後も、空爆に呼応した地上作戦に参加していた。

 ところが、オバマ米大統領が今月10日に空爆強化方針を示すと、シーア派は米国批判を強めた。米国のイラク介入に批判的な、隣のシーア派国家イランの意向が働いた可能性もある。

 イスラム国が支配する北・西部はスンニ派居住地域のため、シーア派側の戦意はもともと高くない。シーア派民兵が戦線離脱すれば、政府軍が兵力確保に窮する可能性もある。

 米軍の空爆拡大を巡っては、スンニ派からも市民の犠牲拡大を招きかねないとの懸念が出ている。

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