19日に1ドル109円台になるなど、このところ円安が進行している。こうした動きについて、「恩恵は限定的」「企業や家計に負の側面も」など、円安をネガティブにとらえる報道が出てきた。財務省OBにも、円安を懸念する声が出始めた。
こうした円安批判の人は二通りのタイプがある。一つは、昨年の円安を大きく見誤ったエコノミストたちと、もう一つは、消費増税による景気後退から「そらし」に使う人たちだ。
まず、円安を予見できなかった人は、もともと金融政策無効論というか、金融政策を理解していない。旧日銀のポチによく見られる。金融政策を理解していないので、国際金融の標準理論であるマネタリーアプローチも知らない。
このような金融政策と為替の関係を理解できない人たちは、今年になって円安が一服して安堵だったところ、最近再び円安傾向になってきたことがまず気にくわないのだろう。そうした人たちにとって、ここ20年来のデフレと同時進行していた円高は飯の種だったわけで、そうした十八番の円高で商売できない怨嗟になる。
円ドルレートは日米のマネタリーベースで決まる
実は、前日銀総裁でデフレから脱却しようとしなかった白川氏はマネタリーアプローチを若き日にいち早く日本に導入した。ところが、その知見は日銀内で出世階段を上る時に忘れたようだ。
金融政策を使ってデフレ脱却するためには、この理論を使わなければいけないが、デフレは脱却できないという「日銀理論」の前で、白川氏にとっては邪魔な知見だったのだろう。この事情について、浜田宏一先生は教え子の白川氏を「歌を忘れたカナリヤ」といった。
マネタリーアプローチを知っていれば、原理は簡単で、円ドルレートなら円とドルの相対的な量で決まる。円がドルより相対的に少ないと、円に希少価値が出て高くなって円高になる。
この単純な原理は、実はプロの投資家のソロスも使っており、ソロスチャートとして有名だ。つまり、円ドルレートは、日米のマネタリーベースの比で大体決まる。これは、国際経済学では常識になっている為替のマネタリーアプローチを簡略化して数量的に説明しただけだ。これから、日本だけが金融緩和すれば、またはアメリカが金融緩和しないと、円安になることを読むのは易しい。
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