◇大相撲秋場所<7日目>
勢(左)が逸ノ城を上手投げで下す=両国国技館で(嶋邦夫撮影)
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(20日・両国国技館)
新入幕の逸ノ城(21)=湊=が勢に上手投げで敗れて初黒星を喫した。ただ、場内は座布団が飛び、勝った勢はインタビュールームに呼ばれるなど、平幕の黒星としては異例の出来事が続出した。トップはともに7戦全勝とした横綱2人。白鵬は豊ノ島を押し出し、鶴竜は小結千代大龍を寄り切った。大関陣は稀勢の里が嘉風を押し出して6勝1敗。新大関豪栄道は遠藤を肩透かしで下して5勝目。琴奨菊は高安にすくい投げで敗れ、3連敗で黒星が先行した。全勝の2人を稀勢の里、逸ノ城、隠岐の海が1敗で追う。十両は栃ノ心と里山が勝ちっ放し。
モンゴルの怪物・逸ノ城が負けるなんて−。そんな雰囲気に包み込まれた館内のボルテージが最高潮に達した。正面の升席から座布団が1枚ひらひらと舞う。普段なら横綱に土がつくと見られる光景だが、新入幕1場所目に6連勝中だった力士の黒星で舞うのは極めて異例のこと。さらに、勝った相手が中継するNHKのテレビインタビューに呼ばれる。三役経験者ら幕内の実力者をことごとく倒してきた逸ノ城の実力を認めているからこその“珍事”だった。
身長で3センチ上回る195センチの勢に立ち合いから土俵際に寄られても、逸ノ城は左上手をきっちりつかんだ。そこから押し込んで投げを打ったが、最後は体を入れ替えられて、上手投げで土俵に倒れた。
「(前に)出ればよかったですね。出るのが遅かった。(相手の投げは)考えていました。気付いたら投げていた。そのまま出ればよかった」。21歳の若者から反省の弁が止まらなかった。
新入幕で初顔が続く。どんな相手なのか、逸ノ城は事前に取組の映像を見て土俵に向かう。相撲留学していた鳥取城北高時代に「授業はサボったし、寝ていた」と勉強は苦手。でも相撲の研究になると熱が入る。もちろん勢の映像もチェック済み。この日の朝稽古後に「差してからの投げがうまい」と話していたが、緻密な分析結果を土俵で生かせなかった。
初黒星にも気落ちはない。「勉強になりました。明日からまた気持ちを入れ替えて頑張ります」と前を向く。北の湖理事長(元横綱)も「上手を先に取ることに頓着することがいいところ。きょうみたいな形ならそうそう落とさないよ」と評価した。新入幕の初黒星が逸ノ城を成長させるはずだ。 (永井響太)
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