公明党がきのう、東京都内で党大会を開いた。11月に結党50周年を迎える今年は、自民党との連立15年の節目でもある。

 党大会には安倍首相が駆けつけ、連立の絆を強調した。山口代表の4選も正式に承認され、自公連立は当面、安定軌道に乗ったように見える。

 連立離脱の可能性が指摘されていた集団的自衛権の問題で行使容認の閣議決定を受け入れ、最大の危機は乗り越えたという安堵(あんど)感に包まれているようだ。

 だが、「戦後レジームからの脱却」をめざす安倍政権と、戦後日本の価値観を大切にしてきた公明党とは、大本の理念で相いれない面がある。両者の亀裂を埋め合わせる明確な道筋が見えたわけではない。

 公明党はこれまで、もっぱら実利を求めることで、自民党への違和感を封印してきた。与党の一角で予算編成に関わり、児童手当の拡充や地域振興券などの政策を実現した。

 そこで重要なのは、福祉であり、景気対策であり、自民党との選挙協力を通じた候補者の勝利だった。

 そのためには連立維持が最優先となる。イラク戦争への自衛隊派遣など大きな流れは自民党の判断にゆだね、ときに妥協もいとわない。その代わり、実利のからんだ政策では微修正を重ね、成果を勝ち取る。

 しかし安倍政権のもとで、そんな政治モデルへの不安が強まってきたのではないか。とくに集団的自衛権の行使容認は、この党に改めて、自らのあり方を問い直している。

 7月の閣議決定の直後、自公系候補が前民主党衆院議員に敗れた滋賀県知事選で、多くの公明支持者は投票所に足を運ばなかった。憲法解釈の変更を与党だけで推し進めた姿が、支持者らを落胆させたことは想像にかたくない。

 安倍首相が「経済優先」を強調している分には、手を組む余地もあるだろう。だが、憲法改正や靖国参拝などで首相の思いが前面に出ると、底流にひそむ亀裂が浮かび上がる。

 党大会では、反戦平和、社会的公正などの意味を込めたという「中道」の政治理念が強調されたが、どこまで貫けるか。

 目を向けるべきは、安倍首相の意向でもなければ、支持母体である創価学会の組織防衛でもない。草の根の人々の素朴な信条を大切にしなければ、この党は存在意義を失う。

 実利の政治を超えられるのか。結党半世紀、「大衆とともに」と言い続けてきた公明党の原点にかかわる。