アンちゃん2か月ぶり11号V3ラン「サイコーです」
◆巨人4―2ヤクルト(20日・東京ドーム)
痛めていた左肘をギュッ、と折りたたんだ。アンダーソンが両脇を締め、体を鋭く回転させた。「打った瞬間にホームランと分かった。満足しているよ」。打球は一直線に伸び、右翼席中段に飛び込んだ。7月26日、中日戦(ナゴヤD)以来の一発。ゆっくりと歩きながら、自ら打ち上げた放物線を見上げた。
初回2死二、三塁。石山の内角高め、139キロの直球だ。「大振りではなく、コンパクトに、と考えていた」。先制の右越え11号3ラン。左肘関節炎で8月6日に2軍落ち。今月15日の1軍復帰後、初アーチが決勝弾になった。
ファーム調整中、前半戦を振り返り、打撃を見つめ直した。「日本人のフォークに驚いた。今まで経験していなかったので戸惑った」。慣れない球種に対応するため、最短距離でバットを出すことを意識。ティー打撃では、ヘッドが遠回りすると打てない右前方からの球を打った。初回の一発は、胸元すれすれのボールを、体にバットが巻き付くようなスイングで捉えたもの。フォーク対策の相乗効果だった。
右太もも裏の筋損傷で離脱した5月以来、2度目の2軍生活。前回との違いは共にリハビリに励むセペダとの“同棲(どうせい)生活”だ。「毎日、セペダの部屋に行っている。野球の試合を見て、いろいろなことを話し合っているんだ」とアンダーソン。G球場での練習後、仲良くタクシーに乗り、都内のマンションへ。セペダの妻・ダマリスさんの来日時には、キューバ料理をごちそうしてもらうなど、支え合ってきた。
5回無死一、三塁の守備では畠山のライナーを飛び込んで好捕。そのまま一塁ベースにタッチ。併殺を完成させた。「使ってもらった原監督に恩返ししたい気持ちだった」と攻守で貢献した。
お立ち台では「サイコーです!」と2度、叫んだ。「阿部さんや村田さん、優勝争いを経験している先輩が和ませてくれる。できる準備を100%して、あとは神のみぞ知る、だね」。完全復活したアンちゃんがVの使者になる。(中村 大悟)