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京都・四条駅に半端じゃねえぐらい”家みたいな居酒屋”がある。
家みたいな店はいろいろ行ってきたけど、そのなかでも図抜けて家感が強い。なにせ、住んでる。店長さん、店で寝泊りしてるのだ。
日常的なんだか非日常なんだか分かんない摩訶不思議な別世界でございました。
 



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▲こんな路地を歩いてく

京都・五条駅に「まるっきり家のような居酒屋」があるという。
大阪・都島の家みたいなうどん屋といい、家みたいな店に目がない僕は、さっそく電話予約をすることに。不定休だから予約しておくのがベターなのだ。電話口から女性の声が聞こえる。「明日、行こうと思うんですが、何時ぐらいからやってますか?」「7時半ですかね。1時頃から買い出し行ってるんで、6時とか早く着くようなら、誰もいないけど勝手に中入っててください」と、合鍵持ってる彼女んちみたいな提案をされた。
誰もいない居酒屋にあがりこんでも成す術がないので、7時半に伺うことにした。

Googleマップに導かれ、薄暗い路地をくねくね進む。
商店もなければ、人通りもない地帯に突入し、ましてや居酒屋なんてありそうもない。



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マップが示した目的地はここ。
それらしい店が無く、同行してくれた友人と「どこだ、どこだ」と探していたら・・・




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見つけた。


建物と建物の隙間に、細い通路が伸びている。スペースネコ穴と書かれた看板もちんまり置かれていた。
手配犯のひとりやふたり、潜伏してそな怪しい空気だ。


 

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 通路の奥から灯火がこぼれ、壁にはキリンビールの提灯が吊り下がっている。


 
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あれ?

居酒屋じゃない。家だ。家がある。

どうやら道を間違えたな、と踵を返そうとした矢先
「あ、昨日電話くれた人っすね~。あがってくださいな」
と厨房から声が飛んできた。


そう、ここが家みたいな居酒屋「スペースネコ穴」なのだ!


家みたいを通り越して、これ、家だよ!
家以外の何者でもないよ!




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あがれと言われたものの、玄関は無い。
この縁側からあがって良いんだろうか。



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初来訪でまるっきり勝手が分からないが、下駄が脱ぎ捨てられてるし、おそらく靴を脱いでここからあがればいいんだろう。
「失礼します」と軒先をのぼると・・・

 

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そこは別世界でした。





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開店直後だというのに、床とテーブルには既に空の酒瓶が点在している。


 
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冷蔵庫のまえには、ビールの王冠が落ちまくってる。


 
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食べかけの鮭とばやピーナッツもあれば、京都の地図も開かれっぱなし。ひょっとこのお面も2つ転がっている。昨夜の宴の光景が脳裏に浮かんでくるようだ。



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ボトルキープだろうか、すすきの大好き山田さんの霧島が棚に置かれている。



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ゴミはゴミ穴へ。



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山と積まれたCDとDVD。スピーカーからはPerfumeが流れている。



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ジョジョにバキにカイジにねじ式。
俺んちかってくらい、床に散らばる漫画の趣味が一致していた。



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本棚にはマンガがぎっしり。



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くすんだ万国旗に



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のし紙が貼りつけられたエアコン。コードからぶら下がってるのは、明和電機の魚コードじゃなかろうか。


す、凄い。


生活感があるんだかないんだか日常的なんだか非日常なんだか、わけの分からない空間が路地の奥に広がっていた。

 

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▲店長さんが蚊取り線香をつけてくれた

店長さんは僕よりちょいと年上のふんわりした女性。美大出身で造形をやってたそうだ。「よそに帰るのも面倒だし」と、この店で寝泊りしている。どうりで、家感があるわけだ。
店長さんは大学を卒業して、24歳から居酒屋を経営してるんだとか。もともとは友人と2人でやってたけど、友人がワーキングホリデーに行っちゃってからはずっと1人で回してる。2年前にこの場所に移ったそうだが「前の店も、間違い探しかってくらい同じ内装だった」とのこと。この無秩序な感じをそのままトレースできるって、凄いな。

「美大出たのもあって、最初はギャラリーめいたことや自主映画の上映イベントなんかもやってたんだけど、どうにも、しゃらくさくてね。やめた。」「善意で言ってくれるのは分かるんだけど、店をサブカルみたいなトーンで語られるのも嫌だし。小汚い店って言われたほうが、いいや」と店長。



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「ま、そんなことより、呑むことのが好きだって分かったしね」とお酒を持ってきて、われわれと乾杯。まだ7時半でほかに客がいなかったこともあって、店長さんと2時間ほど喋りながら呑んでいた。「すぐ眠くなっちゃうんだよね」と言う店長さんは、お客さんがいても寝ちゃうこともしばしばだとか。自由だぜ。むちゃくちゃ肩の力は抜けてるけれど、誠実に会話をしてくれる方である。



 
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▲この奥が厨房

合間合間で厨房に入って、おつまみを作ってくれる。
この店にはメニューなる概念もメニュー表なる物質も無く、そのときの有りもので作ってくれるおつまみコースが存在するのみ。
苦手なものは考慮してくれるから、なにかあればあらかじめ伝えよう。



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白身魚の西京焼き、みょうがとナスの炒め、シイラのお作りなど、しっかりしたつまみが5品も出てきたので驚いた。



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▲ずっと寝ていた大ちゃん

スペースネコ穴という名の通り、実際、猫も2匹いる。
大ちゃんと花江。大ちゃんは座布団のうえでずっと寝ていたが、花江は人懐っこく擦り寄ってきて、同行した友人が簡単にたらされていた。

あまりの居心地の良さに、ぼっと酔い心地になっていたら、あっという間に時間は10時。ぽつぽつ客が集まりはじめた。20代30代のカップルや、クリエイター然としたおっちゃんなど、客層もさまざま。
ビール3本ハイボール2杯にコース料理がついて、会計は2人で4500円であった。

いい。ここは、いい。
いろんな人を連れてきたくなる、反応が見たくなる。
予約が入ってなければ「ま、いっか」で開けない日もたまにあるそうなんで、確実に行きたいって人は一本電話をしておこう。いいよ、ネコ穴!
 




「スペースネコ穴」の情報
オススメ度:★★★★★
アクセス:四条駅から徒歩5分
住所:京都府京都市下京区燈籠町592-1
電話番号:075-343-8377
営業時間:これといって決まってない。夜。
定休日:不定休
予算:3000円もあれば呑んで食える
関連サイト:食べログ