9月23日まで幕張メッセで開催中の宇宙博2014。500点におよぶ大量な展示をエリアごとに細かくお伝えしてきました。

今回は未来の宇宙開発展示エリアやNASAスペースシャトル退役による民間企業との協業開始から、新しい宇宙開発技術と現在の取り組みについてご紹介します。

宇宙博2014

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国際宇宙ステーションISSへの商業輸送から広がる民間宇宙開発。国主導から民間企業協業へ



国際宇宙ステーションISSは計画当初、機材や人員補充を米航空宇宙局(NASA)が所有するスペースシャトルで行う前提で進行していましたが、相次ぐ事故やコスト高からスペースシャトル計画の終了が決定。結果的にISSへの輸送手段や計画の大幅な見直しが必要になりました。

現在、地球からISSへの航行に使用する輸送機のうちISS運用に関わる国が管理しているのはロシアのソユーズ宇宙船(3人乗り有人宇宙飛行船)、無人貨物船のプログレス補給船、欧州補給船、JAXAの宇宙ステーション補給船です。それに加え、オービタル・サイエンシズのシグナス宇宙船とスペースXのドラゴン宇宙船が民間のISS物資補給船サービス実証デモとして稼働しています。



シグナス宇宙船とドラゴン宇宙船は、2006年1月にNASAが開始した「商業軌道輸送サービス(COTS)」によって管理・運用されています。COTSは、ISSへ物資輸送する政府運用の宇宙船の代わりとなる民間企業運用の商業軌道輸送サービスを実証するプロジェクト。なお、スペースXは今年8月に次世代のISS輸送船となるドラゴンV2宇宙船を公開しました。

ドラゴンV2宇宙船は輸送能力が大幅に向上。現行船では貨物のみを運搬していますが、ドラゴンV2宇宙船は乗員最大7名までをISSへ運ぶよう設計されています。大気圏再突入に耐え、側面に備えた SuperDraco エンジンで「地球上のほぼどこにでも、ヘリコプターの正確さで」軟着陸ができる再利用型の宇宙船です。(訂正)



さらに9月16日、NASAが正式に米ボーイング社とISS輸送プロジェクトに関して契約を結んだことを発表しました。今後ボーイングのCST-100宇宙船と、スペースXのドラゴンV2宇宙船が商業軌道輸送サービスにおいて宇宙飛行士をISSへ送り届ける予定です。将来的に国や政府主導の宇宙開発から、民間との協業が進んでいくでしょう。

宇宙船に頼らない宇宙旅行時代の到来。高高度からの帰還実験成功や、宇宙エレベーターなどの新技術の登場



米ソ宇宙開発戦争が始まった1950年代後半から、宇宙飛行士は専門的な知識をもち、長期間におよぶ訓練を受けた人のみが認定される特別な存在です。宇宙の謎の解明が進み、技術革新が続く中でそのような知識や訓練の必要なく、まるで旅行するかのように宇宙へ行ける時代が今後訪れると考えられています。

まずは個人が安全に宇宙空間へ出られるのか、高高度での安全性確保にどんなことが必要なのか確認しなければなりません。その貴重なデータを手に入れ、新たな記録を樹立するため、オーストリア出身のスカイダイバーであるフェリックス・バウムガートナーが2012年10月14日、高高度からのフリーフォール(自由落下)を成功させました。



このプロジェクトはエナジードリンクのレッドブルがスポンサーとなり、レッドブル・ストラトスと名付けられています。高高度からのフリーフォールの成功と最高落下速度記録を打ち立てたほか、有人気球による最高高度記録、スカイダイビングの最高高度記録を達成しました。



宇宙博の展示エリアには、ガードナーが実際に使用したカプセルと宇宙服が展示されており、カプセルは内部の詳細まで見渡せるよう工夫されています。




飛行物体に依存しない宇宙訪問や物資の移送の手段として、宇宙エレベーターの技術開発も取り組みが進んでいます。

宇宙エレベーターの概念は、赤道上の高度3万6千km上空に静止軌道ステーションを設置。そこから地上へエレベーター本体が伝う「テザー」を下ろすというもの。1979年にイギリスのSF作家アーサー・C・クラークが発表したSF小説で話題になりましたが、長らく概念的なものとして扱われてきました。ですが、1991年に強度の高いカーボンナノチューブが発見されたことで、実現の可能性が浮上。日本では宇宙エレベーター協会による技術競技会を通じて技術の確立を目指しています。

宇宙博2014は今まで人類がどのように宇宙を研究し、飛行し、滞在してきたのかを体系的に観覧できる内容となっています。今後も進む宇宙開発の一端を知る機会になるのではないでしょうか。

訂正:公開当初、スペースXのドラゴンV2宇宙船について「ヘリコプターのように翼で」着陸できるとしていましたが、正しくはSuperDracoエンジンの噴射で「ヘリコプターのように正確に」(SpaceX) 軟着陸する機構でした。訂正してお詫びいたします。
宇宙博2014:新時代の宇宙開発は国主導から民間協業へ。新技術により宇宙はより身近な存在に

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