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 金曜の夜11時半、東北最大の歓楽街・仙台市国分町は、スーツや作業着姿の男であふれかえっていた。

 肩を組んで国分町通を歩く3人組に、茶髪の黒服がすっと近づく。

 「ヌキですか? それともお触り?」「込み込みで6にしますよっ」。話すこと5分ほど。男たちは一緒に歩き出し、ビルのエレベーターに消えた。

 「稼ぎはどうよ?」「きょうは全然ひけねえよ」。通りでは、キャッチ(客引き)たちが、たばこをふかしながらたむろする。違法な客引きに目を光らせる私服警官の顔をスマホで撮り、LINEで仲間に回す。

 23歳のタクヤ(仮名)もキャッチのひとり。ワイシャツにサングラス、胸ポケットにはピースの箱。眠らないこの街で、目いっぱい生きている。

■キャッチのタクヤ

 東海地方の小さな町で生まれ育った。

 中学は私立の進学校。だが3年のとき、火炎瓶をよその家に投げ込んで退学。なんであんなことをやらかしたのか、自分でもよくわからない。高校には進んだが、ケンカに明け暮れ、よく警察に世話になった。そのころ、母親を事故で亡くす。ついには父親から「縁を切る」と言われた。

 「ああ、そうですか、という感じだった。人生が本当につまらなかった」

 16歳で家を出た。自動車の下請け工場、とび職人、マグロ漁船員……。どれも長くは続かなかった。九州や関東を転々とし、昨秋、東京新宿・歌舞伎町にたどり着いた。