【北京】中国の電子商取引最大手、阿里巴巴集団(アリババグループ) BABA +38.07% Alibaba Group Holding Ltd. ADS U.S.: NYSE $93.89 +25.89 +38.07% 2014 年 9 月 19 日 16:00 出来高 (遅延15分) : 2.71億 時間外取引 $93.30 -0.59 -0.63% 2014 年 9 月 19 日 19:59 出来高 (遅延15分) : 997,599 PER 4.34 時価総額 $2,314.39億 配当利回り N/A 従業員当たり売上高 $388,547 09/19/14 Alibaba Debut Makes a Splash 09/19/14 Podcast: Alibaba's Red-Letter ... 09/19/14 U.S. Stocks Finish in Mixed Te... 詳細の株式情報とニュース » がニューヨークでの新規株式公開(IPO)に向けて動くなか、中国ではアリババの創業者で会長の馬雲(ジャック・マー)氏が中国本土から移住するかどうかに関心が集まった。
馬氏は移住のうわさを否定したが、こうしたうわさがたつこと自体、アリババの成功をめぐって相反する感情が中国国内にあることを物語っている。
「どこであっても他の場所への移住を考えたことは一度もない」――馬氏は今週、中国版ツィッター「新浪微博(ウェイボ)」の自身のアカウント上でこう述べた。馬氏が香港の永住権取得を申請するとの根強いうわさがあるだめだ。英国の植民地だった香港は今では中国の一部だが、報道の自由や移動の自由を認める法律があり、投資規制もほとんどない。
19日のニューヨーク証券取引所上場に先立ち、アリババがIPOで218億ドル(約2兆3700億円)を調達することがわかると、中国でも多くの人が祝福した。馬氏がアパートの一室で同社を立ち上げ、世界最大規模の電子商取引企業に育て上げたことは有名な話だ。馬氏は政府からは最低限の支援を受けただけで成功し、中国でインターネットブームが始まったころにライバルだった米イーベイに勝利した。
しかし、アリババが海外の市場に上場したため、中国にはチャンスを逃したという思いもある。創業当初、米国のヤフーや日本のソフトバンクから多額の資金を調達したアリババが今でも海外で資金調達を続けることについて疑問の声も上がっている。中国の企業が海外で資金調達を続ければ、中国の企業育成能力に疑問符が付くからだ。同国最大になったかもしれない株式上場を逃したことを嘆く声も聞かれる。
北京のビジネススクール、長江商学院の滕斌聖准教授は「多くの中国人がアリババの成功を誇りに思っていたとしても、IPOをめぐる報道でいくつかの欠陥が露呈した。それは中国の投資家がこの祝宴に容易には参加できないということだ」と述べた。中国で最も成功した企業が海外で上場したことで、国民が多少の無力感を覚えるのは避けられないという。
うわさされている馬氏の移住計画をめぐる議論はIPOを前に激しさを増し、中国では多くの人が国内の問題に改めて不安を感じ始めた。大成功を収めた中国人の間では移住熱が再び高まっている。
中国では人材や資本の流出が懸念されている。最近の調査によると、公害や汚職の横行、貧富の差の拡大から逃れるために富裕層の間で移住を考える人が増えている。
馬氏の移住のうわさに関連して、ウェイボのある利用者は今週、「資本には流動性があり、最高の場所に流れるのは当然だ。中国の役人や大物を見ると、優れた資質を持った人々はみんな、海外に移住している。そしてわれわれはどこが良い場所なのかを知っている」と書き込んだ。「中国本土の状況を改善することに対して代償を支払いたがらない有能な人々があまりに多い」
一方、学者や証券業界の幹部はアリババのIPOに乗じて中国の企業や証券に関する規則を批判している。中国の規則は時代遅れで、多様な資金需要をもつベンチャー企業にはふさわしくないと主張している。
こうした専門家によると、アリババのニューヨーク上場は上海と深センの証券取引所にとって傷口に塩を塗られるようなものだという。中国の主要インターネット企業は中国本土の証券取引所への上場を回避し、騰訊控股(テンセントホールディングス)は香港で、百度(Baidu.com)と新浪はニューヨークで上場した。
対外経済貿易大学(北京)のハン・キ教授は18日付けの英字紙チャイナ・デイリーに掲載された意見記事の中で、「(上海と深センの)A株市場の管理者がそれほど市場に詳しくないことを考えると、馬氏がIPOに上海や深センを選ばなかったことは驚くに値しない」と書いている。「アリババのニューヨーク上場は中国の株式市場がもはや同国の経済成長の要求を満たすにふさわしいものではないことを示しているようだ」という。
インターネットや電子商取引の分野を専門とする投資顧問会社BDAチャイナのダンカン・クラーク会長は、投資家がアリババという中国の「象徴的な企業」を中国の市場で取引できないことは興味深いと述べた。また、「中国で同社のサービスを利用したり楽しんだりしてきたのに海外で株主になれない人々は当然、腹立たしく思う」と指摘した。
国営の新華社通信は国内の投資家が創業当時のアリババを支援できなかった理由についての記事を配信した。記事は業界の専門家の言葉を引用して、中国のベンチャーキャピタル業界は成熟していないと指摘した。この記事によると、中国では近年、新しいタイプのインターネット企業が増えており、それに伴ってベンチャーキャピタルが急増しているが、国内投資家のベンチャーキャピタルへの出資額は不動産への投資額のほんの何分の一かにすぎないという。
しかし、馬氏を支持する人たちにとって、こうした論争も中国最高の起業家の1人が達成した偉業であることに変わりはない。
中国のソーシャルメディア上では、多くのユーザーが興奮し、馬氏を祝福した。
深センにあるアパレル会社の関係者は「アリババの上場は中国の景気動向に影響を与えただけでなく、われわれのような中小企業の発展を後押しした」、「ジャック・マーさん、ありがとう」と書き込んだ。
アリババのIPOは社会の進化の表れとみる人もいる。人気のポータルサイト「新浪(Sina.com)」の金融コラムニストのチェン・シジン氏は今週、論説記事の中で、馬氏が不動産以外の事業で富を築き、中国一の富豪になることを歓迎した。
同氏は「このことは中国の社会にとって大きな一歩だ」と指摘、「不動産業界のメンタリティーは『所有』で、時代遅れの考え方として衰退しつつある。インターネット業界のメンタリティーは『共有』で、新しく進歩的な考え方だ」と述べた。