ボン兄タイムス

社会、文化、若者論といった論評のブログ

今の日本は10年前のアメリカと酷似している

 10年前のアメリカでは、同時多発テロ以降、ナショナリズムが急速に高まった。

 与党・共和党のブッシュ政権の「提灯持ち」メディアの代表格がFOXニュースだ。

 アメリカには国営放送はなく、FOXニュースも民間放送だったのだが、「ブッシュ政権支持」と「愛国心」と「好戦意欲」を一体化させたような熱狂を煽りつつ、それらと反する側(野党などの反政権側および敵性国家やイスラム社会)への敵愾心も煽った。もともと娯楽映画会社の系列と言うこともあってか、編集演出もやたらと過剰。ただひたすら情動的で、いい加減で露骨な偏向もおかまいなしである。そこにはCNNのような理性はない。

 

 これと同じことをやっているのが、いまの日本の国営放送NHKだと考えるとスッとする。

 安倍首相と同じタカ派の籾井会長は「政府が右と言えば右」と公言している。実際、「ニュース7」や「ニュース9」ではテロップや芝居がかったナレーションを用いたセンセーショナルな演出ばかりだ。やたらと誇大的で一方的な報道ばかりに比重を割き、検証の視点の多角性や公平性、ないし、伝える話題のバリエーションの豊富さに欠けるイエロージャーナリズムに走っている。朝の報道番組では「下ネタ」が頻繁に取り上げられ、これらの番組はAKB48の話題をトップニュースに出すなどもしている。俗っぽい話題で関心を惹きつける手法もFOXニュースと同じである。

 もう1つ、10年前のアメリカで起きた出来事が、巨大ハリケーン・カトリーナによる甚大な被害だ。

 カトリーナは南部地方を襲い、複数の州で死者が出た。この時報道が映し出したのは「アメリカの格差社会の現実」だった。

 日本より先を行き、豊かであるとされたアメリカだが、南部の田舎はそうではなく、肥満体系でギャングのような服装をした市民らがロードサイドのショッピングセンターなどで略奪を起こした。

 ブッシュ大統領は元テキサス州知事であり、南部は支持基盤だ。そこには利権もたくさんあるであろう一方、近年では低迷し続けてロードサイドやギャング系文化のみ発展するイビツな状況になったというわけだ。ニューヨークや西海岸の有力地域とは別世界である。

 

 911テロ事件やカトリーナ災害と「国難」が相次ぎ国民の不安感情が一気に高まった結果、自由の大国アメリカは不寛容なナショナリズムの道を進むことになった。

 現在の日本ではどうか。

 3年前に東日本大震災があった。被災地では略奪もあった。

 親戚のいる福島県中通り(中部地域)は際立った被災はなかったが、行けばわかるが、県南部から北部にかけて走る国道4号線はひたすらアメリカの田舎のような風景が広がっている。日本の地方部の中でもかなり昔から「アメリカ化が進んでいる」方だと思う。どの市町村もハリウッド映画やギャングスタラップのPVに出てくるようなアメリカ様式のショッピングセンターが必ずあり、その背景には同じ見た目の家がコピペのように林立する新興住宅地がずらりと広がっている。伝統的で日本式の街並みは駅前や伝統集落にわずかに残っているだけだがそこは空洞化している。走っている車はヤンキー仕様の車しかおらず、どの店に行ってもヤンキーがいる。ヤンキーとは本来アメリカ人に対する蔑称であり、アメリカ式の不良を連想するものだったわけだが、近い匂いは確かにある。

 それなりに発展している福島市郡山市の郊外すら、東京の人間であるとばれているのかすれ違いざまに現地の人からジロジロ見られ、大声で標準語を話すとまわりはみな眉間にしわを寄せて振り返る。そんなものだから、母親なんかにはなぜか普段のように標準語で話すだけで説教をされたし、一人でドラッグストアに買い物に行くと、モーゼの十戒のように目の前にいた買い物客がざっと避けだし、道ができるのだ。反日感情のあるソウルで日本語を話してもこんなことになることはないのに。

 

 もともと福島は自民党の有力な支持地域である。だから早いうちに原発も新幹線も高速道路も誘致できたのだろう。福島出身の総理大臣こそいないが、近隣の新潟や群馬出身の総理はいくらでもいる。北関東・福島・新潟ら辺一帯はアメリカのバイブルベルトと全く同じような構造があると見て取れるだろう。首都圏や京阪神などの大都市とは別世界だ。

 そんな福島の一部の粗末な親戚は「ネトウヨ化」し、東電に対する愚痴の話をしているつもりがなぜか全く無関係なアジア人へのヘイトスピーチを連発するようになっている。大学時代、茨城の僻地出身だという同級生も同じように、いやらしい目つきで陰口をするようなそぶり民族差別を吹聴してきたものだが、これはまさにアメリカ南部における不寛容そのものではないか。口にしないだけでゆがんだ国家主義も持っているのだろう。

 アメリカ南部にはもともと黒人差別があり、当然我々日本人もその対象となるわけで、そんな場所で政治家がイスラモフォビアを煽ればいとも簡単に支持を取り付けることができることができる。インスタントラーメンのように単純な政治を行うことができる。日本の地方議員が自身の政治活動をヘイトスピーチ団体に告知させるようなやり口は、アメリカの右翼政治家の猿真似なのだ。

 

 

 

 今の日本は10年前のアメリカそのものである。

 しかし、2000年代当時のアメリカではFOXニュースは偏ったメディアなのだと言う合意と都市部の「青い州」とバイブルベルトなどの「赤い州」は政治が違う以前に社会構造からして別の次元の世界なのだと言う合意があった。だが、今の日本では、高齢者が多いために世の中の価値観の転換が進まず、昭和式価値観にいまだに固執する無知ほど国営放送NHKはすばらしいのだという固定観念東京の常識はオラがの村の常識と全く同じという実態を無視した偏見が蔓延し続け、若い新しい意見が多く溢れるはずのインターネットすらも、匿名の同調圧力的な環境にはこれに流される昭和育ちの中年が多くおり、こういう馬鹿な連中に媚びた欺瞞の政治が横行している。

 これに一線を画する必要があるのだ。