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區龍宇『台頭する中国 その強靭性と脆弱性』

20140806g636_2 でかくて、分厚くて、おまけに税抜き4600円と大変高い本ではありますが、今や世界第2位の資本主義大国である中国の労働問題を、ルポとかではなく理論的に分析した本というのはほとんどない現在、それだけの代金を払ってでも読む値打ちのある本でした。

中国をめぐっては、あまりにも多くの解決すべき謎があり、中国を観察する人たちにとって、今後も驚くべきことが少なくなるのではなく、さらに多くなると覚悟しておく必要がある。本書の目的は、もっと限定されている。論争を活発化することのほかに、階級、国家、国家官僚の役割にもう一度焦点を当て、それらの相互関係が近年および将来を規定することを示すことによって、中国のジグソーパズルの欠けたピースを埋めようとすることである。

私の主な関心は第2部の「中国における労働者・農民の抵抗闘争」でしたが、中国の体制イデオロギー諸派を分析した第3部も、少数民族問題を取り扱った第4部も、大変興味深かったです。

日本語版への序文(區龍宇)

序 ジグソーパズルの欠けたピース(區龍宇)

第1部 中国の台頭とそこに内在する矛盾

 中国の台頭とそこに内在する矛盾(區龍宇)

 中国の対外経済進出(區龍宇)

 中国の台頭は不可避なのか、それとも没落の可能性があるのか(ブルーノ・ジュタン)

 毛沢東主義――その功績と限界(ピエール・ルッセ)

第2部 中国における労働者・農民の抵抗闘争

 中国における労働者の抵抗闘争 1989-2009(區龍宇、白瑞雪)

 「主人」から賃奴隷へ――民営化のもとでの中国労働者(區龍宇)

 社会的アパルトヘイト下での使い捨て労働――新しい労働者階級としての農民工(區龍宇)

 中華全国総工会の役割――労働者にとっての意味(白瑞雪)

 新しい希望の兆候――今日の中国における抵抗闘争(區龍宇、白瑞雪)

第3部 中国における新自由主義派と新左派

 中国――グローバル化と民族主義者の反応(區龍宇)

 中国の党・国家はいかに社会主義なのか? 書評 汪暉著『革命の終焉 中国と近代化の限界』(區龍宇)

 薄熙來と「一都市社会主義」の終焉(區龍宇)

 劉暁波氏と中国の自由主義者(區龍宇)

第4部 中国共産党の台湾・チベット・新疆ウイグル政策

 中台関係に関する両岸労働者階級の立場(區龍宇)

 自発的な連合か強制的な統一か――中国共産党のチベット政策(區龍宇)

 二重の抑圧――新疆短評(區龍宇)

 香港のオルタ・グローバリゼーション運動(區龍宇)

著者は香港のマルクス主義者です。中国に何百万人といる共産党員の中に誰一人いないと思われるマルクス主義者が、イギリスの植民地だったおかげで未だに何とか(よろよろしながらも)一国二制で守られている思想信条の自由の砦の中で生き延びていられるマルクス主義者ですね。

だからこそ、中国共産党という建前上マルクス主義を奉じているはずの組織のメンバーが誰一人語ることができない「王様は裸だ」を、マルクス主義の理論通りにちゃんと分析して本にできているのですから、ありがたいことではあります。

それにしても、資本家が労働者を抑圧するのに一番良い方法は、資本家自身が労働者の代表になってしまうことだというのは、マルクス様でも思いつかないあっと驚く見事な解法でありました。

なお、労働問題とかにあまり関心のない方々でも、せめて序文だけでも立ち読みしてください。若い頃保釣運動(尖閣列島防衛運動)に参加していた素朴な民族青年が、マルクス主義の立場から資本主義的中国共産党のショービニズムを批判的に見るようになった話は、いろいろと思わせるところがあります。

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