特別警報:運用1年 局所豪雨に対応できず

毎日新聞 2014年08月29日 21時57分(最終更新 08月29日 23時41分)

この1年の特別警報
この1年の特別警報

 大雨や大雪などによる大災害の危険性が高まっている時に気象庁が「直ちに命を守る行動を」と最大級の警戒を呼びかける特別警報が30日、運用開始から1年を迎える。この間に計4回発表されたが、大雨で多くの人が犠牲になった土砂災害では出されないなど、課題も少なくない。

 気象庁が特別警報を初めて出したのは昨年9月16日。台風18号で近畿地方に大雨が降り、48時間雨量の基準を超えた福井と滋賀、京都の3府県に大雨特別警報を発表した。同警報は今年7月9日に沖縄本島、今月9日に三重県にも出された。

 中心気圧など台風の強さを基準とする初の特別警報は7月7〜8日、沖縄本島や宮古島などに大雨や暴風などの特別警報として出された。沖縄本島では、台風による特別警報を解除してから約4時間半後に大雨特別警報を発表したため、沖縄県内の自治体では解除した避難勧告を再び出すなど混乱が生じた。

 一方、昨年10月の台風26号による東京・伊豆大島の土石流災害や、今月の広島市北部の土砂災害では、発表されなかった。特別警報は大雨などが都府県程度の範囲で基準を超えた時に出されるが、この2度の大災害では大雨が局地的だったことなどが発表されなかった理由だった。菅義偉官房長官は伊豆大島災害後の昨年10月の記者会見で「改善は不可欠」などと述べていたが、同じことが繰り返された。

 気象庁気象防災推進室の松村崇行室長は「事例はまだ少ないが、特別警報の対象になった自治体から意見を聞いており、今後課題を整理し改善するところがあれば見直していきたい。また、予測技術の向上にも努め、精度を上げていきたい」と話している。【奥山智己、狩野智彦】

 ◇特別警報

 気象分野では、数十年に1度の大雨、大雪、台風となる恐れがある場合に気象庁が発表する。このうち大雨特別警報は、48時間雨量または3時間雨量に加え、土壌にたまった雨水量を考慮し、地域ごとの基準値を都府県程度の範囲で超えたら発表される。

 また台風については、原則として中心気圧930ヘクトパスカル以下または最大風速50メートル以上の伊勢湾台風級の台風や温帯低気圧が接近・通過すると予想される地域を対象に、大雨▽暴風▽高潮▽波浪▽暴風雪の5種類の各警報がそれぞれ特別警報として発表される。気象のほかに、大津波警報や噴火警報、緊急地震速報(震度6弱以上)も特別警報に位置づけている。

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