わたしたち日本共産党板橋区議団はこれまで、「ホタル館をめぐる数々の疑惑を解明するまでは、館の存廃について決めるべきではない」という態度表明をしてきました。
したがって、今回の区による閉鎖決定には賛同することはできません。
しかしそれは、「ホタル館は存続すべき」という態度を意味するものではありません。
これまで、このブログでの連載「ホタルの闇」において検証してきたように、ホタル館において、元飼育担当職員をはじめとして、その近しい人物や特定企業によって、「私物化」ともいえるような数々の不正な行為が行われてきました。
この不正は、一人の職員の不祥事というような規模でも性質でもありません。まさにホタル館ぐるみでの不正が行われていたのであり、ホタル館が不正の温床=伏魔殿と化していたといえるものです。
こうした認識に立てば、ホタル館の廃止は当然のことでしょう。
しかし問題なのは、こうした認識は、ホタル館に関することに疑問を抱き、その疑問への回答を得るために、調査をし、考察をし、確認をするという行為を経て、はじめて得られるものだということです。
私自身は実際に調査し検証をすすめてきたので「不正があった」という認識に確信が持てますが、多くの区民はいまだ、「ホタル館で何が起きているか」ということすら情報が与えられておらず、正しい判断できる認識を持ちえないのが現状です。
それはマスコミはいまだに正確な報道、問題の本質を射た報道をしていないという問題がありますし、何よりも板橋区当局が区民に判断材料となる情報を提示していないことに問題があります。
このブログでホタル館の検証をはじめたのも、マスコミや区当局が触れようとしない情報を少しでも区民に届けたいという思いからでした。
もっともっと時間をかけ、多くの判断材料を広い区民に示し、区民の納得の上でホタル館の存廃を、区民主体で検討すべきだったと今も強く思います。しかし、区が廃止を先に決定してしまった以上、残された疑惑の解明を急がなければなりません。
最大の疑惑は、ホタル館で本当にホタル飼育をおこなっていたのか?という飼育偽装の疑惑です。
◆外部からのホタル持ち込み説
「幼虫を飼育していないのなら、区民が見ていた成虫はどこから来たのか?」--だれもが思う当然の疑問です。
区の環境課長は区議会で「『外部から成虫を持ちこんでいた』という証言がある」と区議会で答弁していますが、証言者の保護などを理由にくわしい証言内容を明かしていません。
元職員の側は、外部からの持ち込みは「あり得ない」と新聞紙上で語っています。
私自身の調査では、「むし企画」を経由すれば、外部からの持ち込みは「十分可能」であったという確証をえています。
市場においてホタルは成虫で1匹300円前後で販売されているので、区からの委託費の一部で購入することはできます。たとえば1000匹で30万円です。1000匹のホタルを飛ばして「1万匹のホタルが飛んでいる」と説明しても、その違いに気づくことはほとんどできません。
しかし、いくら推論を重ねても「可能性がある」と言えるところまでが限界で、いまの状況では、警察のような強い捜査権限がなければ、仕入れ先の特定など、「外部からの持ち込み説」の立証は不可能です。
それでも、「ホタル飼の実態があった」とは到底いえません。
◆飼育「不可能」という区の考察結果
飼育実態の有無にかかわることについて、今回報告された「検討結果」では、区が初めて踏み込んだ「考察」をおこないました。
ホタル生息数の考察
今回の生息調査によると、ホタルの幼虫が推計 23 匹とされたが、調査前に7万匹生息していたとの一部報道*があるため、生息数についての考察を行う。
*平成 26 年4月4日(金)産経新聞
① 生態系の面からの考察
ホタルの幼虫はカワニナを餌としている。矢島*によると、人工飼育下において1匹のホタルが孵化(ふか)してから蛹(さなぎ)になるまでに、殻の長さが2ミリから 25 ミリくらいのカワニナを平均 24 匹食べたとされている。
今回のせせらぎ内におけるカワニナ生息数が推計 963 匹というデータに照らしてみると、7万匹のホタルの幼虫が生息しているとしたら、餌を定期的に与えないとホタルの生体維持は不可能である。施設(飼育棟)等で飼育していたカワニナの数も尐なく、ホタル7万匹が生息するだけのカワニナの数は確認できなかった。したがって、餌のカワニナ 963 匹の数を考慮すると、7万匹のホタルの生息は不自然であり、不可能であると考える。
*矢島稔「ホタルが教えてくれたこと」(1999)偕成社
② 施設規模の面からの考察
せせらぎは、湿地帯 5.4 ㎡(1.8m×3.0m)と流れの部分 19.5 ㎡(15m×1.3m*)から成り、川表面積は、249,000 ㎠(54,000 ㎠+195,000 ㎠)となる。
7万匹のホタルの幼虫が生息する場合、生息密度は1㎠あたり0.28匹(70,000匹/249,000 ㎠)となる。今回の調査で用いたサーバーネットの枠の面積は625 ㎠(25 ㎝×25 ㎝)であり、1回の採集によりサーバーネットに入るホタルの幼虫の数は 175 匹(0.28 匹/㎠×625 ㎠)程度となるはずである。しかし、調査では 27 区画全体で 2 匹しか捕獲できなかった。したがって、7万匹生息しているとすることは、逆に不自然である。
*川(せせらぎ)の断面はⅤ字状になっているので、のり面を考慮し川幅を 1.3mとした
板橋区が公式の文書でホタル飼育について「7万匹のホタルの生息は不自然であり、不可能である」「7万匹生息しているとすることは、逆に不自然」と言及したのはこれがはじめてのことです。
これまで板橋区はホタル館でのホタル飼育の個体数を元職員からの報告をもとに成虫で約2万匹と発表してきました。
ホタルの羽化率(卵から成虫になるまでの割合)は1%前後といわれています。この率は元職員の著書などにも紹介されています。幼虫から成虫になる割合はそれよりも多い数字になるでしょうが、7万匹の幼虫というのは、2万匹を成虫にするために必要な匹数といえます。
その7万匹を飼育するためには餌のカワニナも足りないし、スペースや密度の関係から見ても7万匹は不自然な匹数になってしまうというのです。つまり2万匹を成虫まで飼育できる条件がなかったと表明しているのです。
◆誰も語らない「せせらぎの中の幼虫」
それでも、元職員やその支援者たちは、この区の見解を認めようとしていません。
板橋区の生息数調査(1月27日)では2匹しか見つからず、推定を加えても23匹にしかならない。一方で飼育担当の元職員は「毎年2万匹を飼育していた」と主張し続けている――この両極の間で、多くの区民が「どっちがほんとうなのだ」という問いに対する答えを得られずにいます。
私は、区がここまで踏み込んだ考察をしているのであれば、区として明確に「ホタル館において2万匹の人工飼育はおこなっていなかった」と結論を示すべきだと考えています。もちろんそれは、毎年区民が見ていた成虫の光の乱舞は外部から持ちこまれたホタルによる「偽装」であったということ意味します。
なぜ「飼育していない」といえるのか?--さきの「考察」でほとんど回答しているようなものですが、あらためて証明をこころみたいと思います。
前提として確認しなければならないのは、飼育の有無が問題となる範囲です。
ホタルの成虫段階は、夜間特別公開で1万人以上の人々が観察、目撃をしているのですから、疑問の余地なく「ホタルの成虫は存在」していました。
つぎに、その成虫から産まれた卵と、その卵から孵ったばかりの孵化幼虫も、現在の区環境部長をはじめ、元職員以外の人間が複数で確認しているので「卵と孵化幼虫は存在」していたことは確実です。
存在の有無が問題になるのはここからです。
孵化幼虫は水槽のなかや、観察のためのシャーレのなかで多くの人に確認されいますが、その孵化幼虫が屋内のせせらぎや屋外のビオトープになかに移された後の姿を、元職員とその支援者(ボランティア)以外は「見た」という人はいないのです。
昼間にホタル館を訪問した人たちはたくさんいますが、こうした人々もせせらぎに案内され、「ここにホタルの幼虫がいます」と説明をうけているだけです。実際に幼虫の姿を見た人も水槽にいる幼虫を見ています。
せせらぎに入れられた幼虫がどんな様子で成長し、上陸し地中で蛹になるのか、そのプロセスの目撃者がいませんし、観察記録もありません。
つまり、せせらぎ(と、ビオトープ)の中に幼虫が存在していたこと、しかも2万~7万という規模で存在していたという証拠が何もないのです。
第一義的な立証責任を負う飼育担当元職員は、区環境課による聞き取り調査に応じないまま辞表提出しています(後日、懲戒免職)。
記者会見では、元職員は飼育日誌なるものの一部を公開しています。それは5月6月ごろのホタル上陸数の日々の記録ですが、元職員以外の人を交えての複数人で確認しか記録とはなっておらず客観性はありません。
記録の内容も、上陸数でけでは不十分で、せせらぎ入れた年月日、幼虫の大きさなど成長記録など、飼育実態を示すディティールをもった記録が必要ですが、そうした記録はいっさいありません。
飼育業務を委託されており、飼育現場を十分知っているはずの「むし企画」にいたっては、だれが雇用され飼育作業に従事していたか? 委託費は何に支出していたか? などの質問にも、「むし企画」代表から回答を得られていない状況です。
◆証明されない幼虫の「死滅」
元職員は飼育実態の存在証明をしないまま、「区の生息調査で幼虫が発見できなかったのは調査方法がずさんなためだ」という主張を繰り返しています。
事件は、平成26年1月27日(月)休館日の早朝、何の予告もなく起きました。『板橋区ホタル生態環境館』に板橋区役所資源資材部環境課の委託を受けた業者が訪れ、館内のホタル幼虫数を調査するという名目で、幼虫が生息するせせらぎに土足で立ち入るという信じられない事が起きました。
これにより、まだ冬季で未成熟なホタルの幼虫とその餌になるカワニナの稚貝が何千匹も死滅したと推測されます。
調査でせせらぎに入ったことでホタル幼虫もカワニナ稚貝も「死滅」したことにされていますが、その証拠となる幼虫の死骸は発見れていません(カワニワの死骸=カラの貝殻はもともとたくさんあった)。
調査は予告なしでおこなわれましたが、調査開始後に多くのボランティアや元職員も訪れ、調査のようすを見ており、その際撮影されたビデオ映像も残されています。
一部に言われているように、元職員が立ち会わない中で調査がすすめられたわけではありません。
その時に撮影された映像や、調査に立ち会ったボランティアたちの目撃証言がホタル「死滅」の証拠と主張されています。
しかし、それらは証拠にはなりえません。
なぜなら、
①映像に映っている物体は、不鮮明な映像のなかでは、ゴミなどのほかの物体である可能性も高く、「ホタルの幼虫」であると断定できる根拠がない。
②映像撮影者も、調査当日(=撮影時)に自分が撮っているものが「ホタルの幼虫」であることに気づいていない→調査当日は「ホタルである」という認識をもっていない。
③調査をみていたボランティアたちは当日、さかんに「ホタルがいる」などと声をあげていたが、じっさいに「これがホタルだ」というふうに調査員に対してホタルの幼虫の存在を示した事実がない。
④「見えている」というホタルの存在を示せないのに、カワニナの殻に隠れて見えないホタルについては、「そこにいる」と強く訴え、環境課長に殻を割らせる行為までさせている(目撃証言の矛盾)。
⑤大事なホタルの生命が自分たちの目の前で失われているといいながら、それを阻止する行動をとっていない。
と、目撃内容に大きな矛盾があり、幼虫の死滅あるいは流出は客観的な事実による証明がされていません。
◆まとめ
もともと「いない」「存在しない」ということは「ないものはない」という他にはなく、「不存在の証明」を直接おこなうことはできません。
しかし間接的に、たとえば「存在する」という命題の矛盾を挙げることにより、「存在しなかった」という結論を導きだすことができます。
「2万匹のホタルを成虫になるまで飼育していた」とするならば、区の「考察」にあるように、カワニナの数、狭いスペースとの矛盾が起こります。
加えて、元職員・「むし企画」が飼育実態を語れないという事実とも矛盾しています。
元職員が「不存在」に対する反論としている「調査による死滅」は、それを立証する証拠がありません。
以上のことから、ホタル館ではホタル飼育の実態がなかったと結論せざるをえません。
もちろん、さらに直接的な証拠を押さえるべく、いっそうの調査活動が求められており、幕引きなどはゆるされません。