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【政治】

秘密交渉「知る権利侵害」 「TPP違憲」有識者ら提訴へ

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 環太平洋連携協定(TPP)交渉は憲法違反だとして、有志の弁護士らが交渉の差し止めと違憲確認を求める訴訟を起こすことになった。多くの経済交渉の中でも、TPPが国の主権を脅かす協定で、憲法に基づく数々の国民の権利が侵害されると指摘。「秘密主義」の交渉で政府が国民に情報を隠したまま、米国などと合意を積み重ねているとして、国民主権に反すると批判している。 (金杉貴雄)

 TPPについて、自民党は二〇一二年の衆院選で「聖域なき関税撤廃を前提とする限り、交渉参加に反対」と公約。政権復帰後の一三年三月、安倍晋三首相は「聖域なき関税撤廃が前提ではない」と交渉参加を表明した。だが、交渉の内容は公式にはほとんど明らかにされない。公表されるのは協定妥結後の結果だけ。国民に意思表明する機会を与えないまま、交渉結果は既成事実化される。

 有志の弁護士らは「WTO(世界貿易機関)の貿易交渉でもこれほどの秘密主義はない」とTPPの特異性を指摘。憲法二一条(表現の自由)に基づく国民の「知る権利」を侵害していると訴える。

 さらに、国の主権が侵害される恐れの一つとして、投資家と国家の間の紛争を解決するための「ISDS条項」が議題となっていることを強く懸念している。

 この条項は、企業や投資家が現地政府が協定に違反していると国際機関に提訴できる権利。有志らはこの条項により、日本独自の食や環境の安全基準などが国際的な水準に合わないとして訴えられ、法や基準、慣習の変更を迫られかねないと指摘する。

 有志の一人の山田正彦元農相によると、呼び掛け人には、歌手の加藤登紀子さんや経済学者の宇沢弘文東大名誉教授らが名を連ねる。名称を「TPP交渉差し止め・違憲訴訟の会」とし、日本医師会の原中勝征前会長が原告団代表となる見通しで、年内に提訴する方針。一人二千円ずつの支出で多くの国民に原告団への参加を募り、最終的には一万人規模を目指す。

 有志の弁護士らは、TPP交渉で遺伝子組み換え食品の表示、残留農薬の基準緩和、安価な後発医薬品(ジェネリック医薬品)の販売規制などが話し合われていると強調。これらが適用されれば、健康で文化的な生活を営む権利(憲法二五条)、幸福追求の権利(一三条)を損ないかねないと指摘する。

<環太平洋連携協定(TPP)交渉> 日米両国やシンガポール、オーストラリアなど環太平洋地域の12カ国が貿易や投資の自由化を目的とした包括的協定の締結を目指している協議。農産物や鉱工業品にかかる関税撤廃や引き下げ、知的財産の扱いなどが懸案となっている。日米両政府は年内の大筋合意を目指している。

 

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