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 指定暴力団・工藤会が本拠を置く北九州市では、社会から疎外されて暴力団員との接点を持ちやすくなった非行少年らの就労支援の取り組みが進んでいる。働く場を提供し、仕事を通して自立を促す。地域社会が手を取り合い、暴力団員の供給源を断つ試みだ。

 生活困窮者を支援する同市の団体は2011年から若者が働く場を提供している。生活保護を受ける若者らに働く機会を与えて自立につなげようとの狙いだ。

 団体の代表は、非行少年らにも接するうちに「家庭や学校に居場所がなくなり、自分の価値を認めてくれる人が周囲にいない若者の中には、暴力団に引き寄せられる人もいる」と感じてきた。福祉事業所への弁当の配達や販売など、働くことで自分が必要とされていることを実感できる居場所づくりを心がけている。

 北九州市内のある事業所は、非行歴のある少年らの雇用を受け入れている「協力雇用主」だ。

 20代の男性従業員は万引きなどの非行を重ねた後、約10年前からここで働き始めた。仕事の合間には、「金の貸し借りには気をつけろよ」と部下に声をかけていた。1カ月ほど前から働き始めた少女は「ここに来て悪いことをやめようと思った。今は職場に迷惑をかけられないという思いが強い」と話した。ネイルアートで飾られていた少女の手は作業で汚れ、爪も短く切りそろえられていた。事業所の男性経営者は少女の手を見て、「働く人の手だ」と目を細めた。

 男性経営者が非行少年らの受け入れを始めたのは「非行歴があると、雇ってくれる会社がなかなか見つからない」と保護司から相談を受けたのがきっかけ。知人の事業所にも少年らを紹介してきた。