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【昭和天皇実録公表】言動考察、当時の社会情勢と照らし合わせ検証を
2014.9.9 07:50
宮内庁が公表した昭和天皇実録は、未公開の側近日誌などを含め3152点もの資料を同庁職員が収集・分析し、史実と確認された昭和天皇の事跡を後世に伝えるために編纂された。
だが、その内容や編纂方針をめぐっては、歴史研究者らの間で評価が分かれることだろう。初出のエピソードが多数盛り込まれた幼・少年期に比べ、即位後は内面に関わる記述が少なく、教科書の書き換えが必要なほどの新事実はほとんどみられなかった。
宮内庁は編纂にあたり、昭和天皇の言動が政治問題化しないよう、必要以上に記述を抑制したのではないか。例えば戦前の記述からは、よほど歴史に精通した者でなければ軍部の暴走などに苦悩する内面がうかがえず、「昭和天皇は危機の中でもデッキゴルフ(スティックを使ったボールゲーム)ばかりしていたという誤ったイメージを与えかねない」と、京都大の伊藤之雄教授は指摘する。
一方、読み解く側にも注意が必要だ。実録には、昭和天皇が陸海軍の大元帥として個別の作戦指導に関わった場面や、終戦後に米軍の沖縄占領継続を希望したとする報告書の存在なども記された。こうした言動は当時の社会情勢や政治システムの中で判断すべきで、現代の価値観をもって評価してはならない。
残念ながら、実録の記述を政治問題化しかねない風潮が今の社会にあるのも事実。慰安婦問題をみれば、宮内庁の懸念を理解できなくもない。
激動の昭和史を明らかにすることは、現代の日本を考察する上で重要だ。当時の価値観と照らし合わせながら、実録を正しく読み解く姿勢が求められている。
(川瀬弘至)
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