スコットランドの人びとは、英国に残る道を選んだ。独立の是非を問うた住民投票で、反対が賛成を上回った。

 背景にあったのは、英国との一体感を保ちたい人びとの願いだけではない。混乱を避ける意識も強く働いたとみられる。

 もし独立となれば、通貨や住民の国籍など、国のかたちをめぐる途方もない交渉が待ち構えていた。財政、福祉、国防など、あらゆる分野で見通せない不安がぬぐえなかった。

 ただ、これで一件落着とはならないだろう。このできごとが投げかけた問いは重い。

 なぜ、独立を求める声がこれほど広がったのか。英国は現実を振り返り、自らを問い直す必要がある。その教訓は他の国々にとっても有益なはずだ。

 2年前に住民投票の実施が決まった時、独立派の支持は3割ほどだった。英キャメロン政権が実施を認めたのも、必ず勝てるとの自信があったからだ。

 ところが独立派は終盤になって大きく支持を広げた。最終的に敗れたものの、一時は世論調査で逆転を果たした。

 そこには、地域のナショナリズムだけでなく、英政府が進めてきた政策への不満があった。

 欧州連合(EU)と距離をおき、自由競争を重んじる英政府に対し、スコットランド住民は、EUとの協調、福祉重視などを志向している。

 そうした理念をめぐる葛藤は、多くの国々が共有する課題でもある。

 投票に表れた声に英国は耳を傾け、自国の制度や政策のあり方を問い直すべきだ。さもないと、独立を求める声は再び高まるに違いない。

 スコットランドの自治をどう拡大するか。地元とどう対話するか。今後の課題に取り組む英国の姿を世界が注目している。

 それは、スペインやベルギー、フランスなど、独立を求める地域を抱える欧州諸国だけに限らない。民族や歴史の経緯などから、分離独立をめぐる係争を抱える国は数多い。

 英国は、そうした国々とも意見を交わしつつ、開かれた議論を可能とする土壌づくりを進めてほしい。

 独立まではいかずとも、統治の権限を中央と地方とでどう分け合うかは、ほとんどの国にとって普遍的な課題でもある。

 日本も決して無縁ではない。北海道や沖縄はじめ、地方分権を求める声は少なくない。日本と英国とで、何が共通し、何が異なるのか。

 私たち自身も考えるきっかけとしたい。