【正論】「兵力逐次投入」で失敗した朝日 防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛 (2/3ページ)

2014.09.17


 佐瀬昌盛・防衛大学校名誉教授【拡大】

 ≪大胆な「戦略的後退」こそ≫

 要するに、朝日の謝罪作戦は行き当たりばったりなのだ。慰安婦問題では吉田清治の作り話は30年以上も昔のことなのに、今年8月以降の朝日の対応は望遠的でなく近視眼的だった。長い時間の経過で問題がこじれにこじれたことへの配慮が欠けていた。だから「兵力の逐次投入」が試みられた。

 この軍事作戦用語は、戦況思わしからずとなるとその都度、ちびちびと投入兵力を増やす戦法を言う。多くの場合、局面は好転するどころか、逆に悪化する。朝日は今、この状態にある。

 必要なのは大局的に事態を見直し、ちびちびの弥縫(びほう)策をやめて大胆な「戦略的後退」に転じることだろう。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。逆は「溺れる者、藁(わら)をもつかむ」だ。どちらがよいかは明らかである。決断の時だ。

 30年ほど前、ソ連指導者ゴルバチョフはペレストロイカに着手した。つまり「立て直し」である。それまで共産主義イデオロギーを錦の御旗に、歴代のソ連共産党書記長たちは自国経済の動脈硬化を「兵力の逐次投入」的手法で凌(しの)ごうとした。ゴルビーはこの弥縫策をやめ、共産主義の教義にも疑問符をつけた。大胆であった。が、悲しいことに着手が遅すぎ、ソ連は蘇(よみがえ)らなかった。教訓的である。

 朝日にもペレストロイカが必要だ。ゴルビーはどこにいるか。ただ、忘れてはなるまい。ソ連のゴルビー登場は時機を失した憾(うら)みがあった。西側は彼の手法に目を丸くしたが、「立て直し」路線は道半ばで途切れた。朝日に必須のペレストロイカも同じ運命に見舞われるかもしれない。けれども、だからといって、躊躇(ちゅうちょ)するようなら血路が開かれるはずはない。決断の時は今を措(お)いてあるまい。

 

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