◆吉田氏「怒り狂う」
朝日は菅氏が感情をむき出しにしたのは数少ないと強調し、菅氏は現在、朝日に対し認めたその数少ないという事例すら、相手の受け止め方の問題へとすり替えようとしている。
だが、第1原発元所長の吉田昌郎氏も政府事故調のヒアリングに対し、菅氏が東電本店に乗りこんで「演説」した際のことをこう語っているではないか。
「ほとんど何をしゃべったか分からないですけれども、気分悪かった」
「かなり態度悪く、怒り狂って喚(わめ)き散らしていた」
朝日が取り消して謝罪した今年5月20日付の記事「所長命令に違反 原発撤退」からも、こうした吉田氏が菅氏の激高ぶりを証言した部分は省かれていた。
このときの《解説》記事は「事故の本質をつかむには一つひとつの場面を具体的な証言から再現・検証する必要がある」と説く。ならばなぜ、現場に介入した菅氏に関する具体的な証言は割愛したのか。
今月11日の朝日の記者会見でこの点を問うと、杉浦信之編集担当(当時)は「意図があったとは全く考えていない」と答えた。何か事情でもない限り、ああいう記事にはならないはずだが。(政治部編集委員)