この記事が出た直後、韓国・済州島の実家から国際電話が入った。聞けば、国家安全企画部(諜報機関=現・国家情報院)の要員2人が夕飯時の実家に現われ、家族を尋問したという。
彼らは「身元調査」という不可解な名目で、親戚の家など計5か所を訪れた。当局による嫌がらせであることは明白だった。
ネットの発達とともに「売国奴・呉善花」の虚像が独り歩きし、私の著作を一度も読んだことがない人からも「犬畜生の呉善花をぶっ殺せ」「公開処刑しろ」「呉善花の父母、子供まで三代を殲滅しろ」と罵詈雑言を浴びせられるようになった。
極めつけは、日本国籍を取得し日本に帰化した私に対する韓国当局による2度の入国拒否だ。1度目は盧武鉉政権時の2007年。母の葬儀のため済州島に向かった私は空港で何の前置きもなく入国拒否された。この時は日本の外務省ルートを通じた話し合いで葬儀の出席のみ許されたが、滞在中も当局は監視の目を緩めなかった。
2度目は朴槿恵政権下の昨年7月。甥の結婚式出席のため韓国に向かった私は仁川空港で再び入国拒否に遭い日本に強制送還された。いずれも明白な理由は示されなかったが、青瓦台(大統領府)の意向であることは間違いない。
韓国には「手は内側に曲がる」(外には向かないという意味)との諺がある。韓国人の強い身内意識を表わすものだ。「民族は家族」であり、家族を貶める者は国ぐるみで排除、抹殺される。「親日言論」の封殺が「愛国行為」と称賛される国に常識は通じない。日本は関係改善を急がず、韓国と少し距離をおいたほうがよいかもしれない。
※SAPIO2014年10月号