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「ジャーナリスト宣言」が虚しく響いて「虚報のチカラ」――続・おごる「朝日」は久しからず(6)
〈言葉は感情的で、残酷で、ときに無力だ。それでも私たちは信じている、言葉のチカラを。ジャーナリスト宣言〉。これは2006年、朝日新聞が創刊127周年を機にテレビCMなどで大々的に展開したキャンペーンのコピーだ。さすがは朝日。「靖国“ご注進”報道」や「従軍慰安婦大誤報」が損ねた国益の大きさを考えれば、確かに彼らの謳う「言葉のチカラ」は凄まじかった。もとい、「虚報のチカラ」は――。

「本当に彼らは、突っ込みやすい人たちです」

 と呆れ返るのは、コラムニストの勝谷誠彦氏だ。

「池上彰さんの原稿の扱いでも、朝日が掲載拒否した本当の理由は、内容が気に入らなかったからです。にもかかわらず、彼らは『関係者への人権侵害や脅迫的な行為などが続き、この動きの激化を懸念した』などと言い訳し、論調をすりかえました。これだけでも情けないけど、8年前の『ジャーナリスト宣言』では、“戦争、テロなど世界中の悲劇を取り上げ、「言葉」の前に立ちふさがる大きな事象に対しても、朝日新聞は言葉のチカラを信じて報道していく”旨、さも偉そうに宣(のたま)っていたんですよ。暴力に屈しないどころか、ちっともそのチカラを信じていないじゃないですか」

■日本人への言論テロ!

 そもそも「ジャーナリスト宣言」は、前年に長野総局の記者が取材もせず、虚偽のメモを作成し、それに基づき記事が掲載された「田中康夫知事の発言捏造問題」など不祥事が相次いだことから、当時の秋山耿太郎社長が謝罪会見を行い、「解体的出直し」を誓ったもの。「ジャーナリズムの原点に立ち、真実を追求する姿勢を強めていく」として開始したキャンペーンだった。しかし翌07年、新潟総局の写真記者による記事盗用が発覚。虚しくも、「宣言」はわずか1年で広告自粛に追い込まれ、キャンペーンは雲散霧消した。恥ずかしくて、アピールできなくなったというわけだ。

 哲学者の適菜収氏はこう切って捨てる。

「週刊誌の広告掲載拒否や池上さんの問題は、他のメディアに騒がれるのが目に見えていた。そんなことも想像がつかないとは、朝日には危機管理能力もなく、それだけでもジャーナリスト失格です」

 さらに続けて、

「一連の問題で朝日は事実に向き合わず、論点をすり替え、挙句の果てに広告掲載拒否の逆切れまでやった。事実よりもイデオロギーを優先させてしまっており、もはやジャーナリズムとは到底呼べません。戦争やテロ等、言葉の前に立ちはだかる大きな事象と闘うと宣言したが、朝日のしたこと自体がその事象の一つ、すなわち言論テロに他ならない。日本人に対する言葉の暴力、人権侵害なのです」

 その「ジャーナリスト宣言」はこうも嘯(うそぶ)いていた。

〈ときとして言葉は、人を傷つけ、人を誤らせ、人の命を奪う。けれども言葉には、世界を変える力がある。人びとを動かす力がある。(中略)朝日新聞は、言葉のチカラを、ジャーナリズムを信じて闘いつづけます〉

 もはやブラックジョークと言うほかない。いみじくも従軍慰安婦誤報問題でそのチカラを証明した朝日。もっとも、「言葉」を「虚報」に置き換えれば、確信犯とも受け取れる。思わず背筋が冷たくなる。

「特集 続・おごる『朝日』は久しからず」より
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