2014年09月19日
【記憶術】『誰でもできるストーリー式記憶法』山口真由
誰でもできるストーリー式記憶法
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「東大主席×財務省×弁護士」というテンコ盛りの肩書きで有名な山口真由さんの記憶術の本。タイトルに「ストーリー式」とあったので、てっきり記憶術のうちの「物語法」の亜流かと思いきや、全然違ったという……。
アマゾンの内容紹介から。
テレビで話題の美人弁護士である著者が最も得意としているのがインプット(記憶)。インプットには特別な才能はいらないという著者が実践する「ストーリー法」を初公開!
とにかく、予想していたよりもディープな内容でした!
Reading / Wiertz Sebastien
【ポイント】
■1.「意味の流れの塊」の最初の部分を覚える『枕草子』の一節を暗記することは、決して無意味な文字の羅列を覚えることではありません。
「春夏秋冬、一番美しいのは一日のいつ?」という問いかけに対して、「春は曙」「夏は夜」「秋は夕暮」「冬はつとめて」と次々答えていく。それぞれの意味の流れの塊があるので、その塊の最初の部分さえ思い出せば、あとは「意味の流れ」に沿って思い出せるのです。(中略)
試しに、結婚式のスピーチとか長めの講演会とか、そういう場面において、話を一言一句暗唱することを放棄してください。代わりに、意味の流れごとにひとかたまりの単位に区切る。そして、その塊の滑り出しだけを、いつでも見られるようにどこかに記しておいてください。90分の講演会なんて、絶対に覚えられないと思っていた私は、この方法で苦労なく、講演のすべてを滑らかに再現できるようになりました。
■2.時系列で覚える
「ストーリー法」の特徴は、「時系列」を利用するところです。
もっとも、覚える対象は必ずしも時系列では並んでいないという反論があると思います。(中略)
しかし、どんなテーマであっても、自分が経験した順番、つまり、自分が読んだ(見た)順番や聞いた順番で「時系列」にすることはできます。
ものを読む、聞くというインプットの経験は、必ず自分にとって、読んだ順番や聞いた順番という「時系列」のある経験となります。だからこそ、法律の本でも理科の教科書でも、読んだら読んだ順番で覚えて、その順番で再現する。
自分で作った時系列に自分で従うことが覚えやすくする重要なポイントになります。
■3.同じように読む
私は覚えたい本を読むとき、ずっと同じように読んでいきます。具体的には、本のページをめくるときに手を掛ける位置を固定化するのです。私の場合には、本の下部1/3の場所を親指と人差し指で摘んでぺージをめくります。
一定の箇所に手を掛けて、一定の動作でぺージをめくるというように、動作を分解して、できるだけ単純なものにしておくこと。これは、飽きずに「繰り返す」ための重要なポイントです。工場の生産ラインを見れば分かるように、画一化された「作業」であれば、考えずにただひたすら繰り返すことが容易になります。
また、こうすることで「本の厚み」という記憶が自分の体に身につきます。そしてこれが、不思議なくらいに覚えることを助けてくれるのです。
■4.「複数回記憶法」では黙読して音読しない
「複数回記憶法」の「読む」という動作、これは「黙読」を前提にしています。ここでいう「黙読」は、単に声には出さないという意味ではありません。「音読」とは完全に切り離された「黙読」という意味です。
「当たり前じゃない?」と思われるかもしれません。しかし、声を出していないだけで、心の中では音読しているということが、実は、往々にしてあるのです。
その目安は「ルビ」です。私は、複数回記憶法をするときは、「ルビ」は一切読んでいません。漢字を形として捉えているので、ルビは無用の長物なのです。
黙読しているにもかかわらず、ルビが目に入ってきてしまう。これが、「心の中の音読」を知る基準になります。そして、その場合には、前述のとおり、圧倒的に読むスピードが落ち、繰り返しの頻度を下げてしまいます。ですから、黙読という場合には、音読の考え方とは、完全に切り離す必要があります。
■5.負荷の低い動作から始める
記憶ゼロの段階で負荷の高い方法に飛びつくのは、非常に効率が悪い。負荷の少ない動作を繰り返すことからはじめて、ある程度、輪郭をつかんだ段階で負荷の高い動作に移行するほうが、断然、効率性が高いのです。
具体的には、はじめは黙読から始めましょう。これは目を使って読むだけです。次に、声に出して音読します。これによって口で話し、耳を使って聞く動作がプラスされます。さらに、概ね暗唱できるようになってはじめて、書く動作を取り入れましょう。これによって、手で書き、それを目で見る動作がプラスされます。
■6.授業を録音し、翌日までに2倍速で聴く
117ぺージで書いたとおり、ライブでの授業でノートを取りきれなかった私は、録音テープを聴きながらノートを補足する作業をしていました。
しかし、次の日もその次の日も授業はある。録音テープを聴くタイミングが遅くなると、録り溜めてしまったドラマのように、聴くタイミングを失います。
しかたなく、私は、授業があったら、できるだけその日のうちに2倍速でもう一度聞くことにしました。
これが大正解。1日以内に聴いたものは、圧倒的に記憶への定着が高まったのです。
【感想】
◆山口さんと言えば、「『7回読み』勉強法」。処女作で登場するTIPSの中でも、「勉強法」的にはかなりのウエイトを占めており、2冊目ではとうとう書名にまでなっております。
東大首席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法
この本、一応書店でチェックしたのですが、上記のように「『7回読み』勉強法」の概略は既に処女作でご紹介していたのと、ご自身の体験談が長い(全体の1/3以上)ので、スルーしてしまったのですが。
ざっくり言ってしまえば、これを上回るTIPSはお持ちではない(失礼)と思っていたため、今回新たに勉強本を出されると知って、正直「えっ……?」となった次第。
冒頭でも触れたように、書名からして「物語法」っぽいですが、そんなやり方されてたなんて聞いてません(私が忘れただけ?)し、どんなものかとリアル書店でチェックしたところ、あらビックリ(?)の記憶法が収録されていたという。
上記ポイントにもあるように、「物語法」とも違いますし、「7回読め」とも言っておらず。
ていうか、「本を7回読むだけでいいんじゃなか(ry」。
◆とにかく本書の中では、いっさい過去の著作について言及されていません。
「『7回読み』勉強法」というフレーズすらなし。
一応、上記ポイントの4番目にもある「複数回記憶法」というものが出てきますが、こちらは読むだけでなく、アウトプット(言う、書く)の繰り返しも含むので、「『7回読み』勉強法」とは違うのでしょう(回数にも触れてませんし)。
これは「ネタかぶり」を避けたためかもしれませんが、本来、勉強法とは人によって「向き不向き」があるため、メインとなる勉強法が合わないと、本丸ごと1冊、役に立たない可能性があり、「『7回読み』勉強法」はまさにそのパターンでした。
その点、本書は細かいTIPSの集合体であり、自分に合ったものをチョイスすれば良いかと。
少なくとも私は、「なるほど!」と思えたものがいくつかありました。
◆たとえば、上記ポイントの1番目にある、意味の流れごとに単位を区切って、その滑り出しを記憶する、というやり方は記憶の仕組みから言っても理に適っています。
たまたま私が受験した税理士試験は、「一言一句丸暗記」しないといけない試験だったため、実践したことはありませんでしたが、そこまでタイトに暗記する必要のないものであれば、この方法は有益でしょう。
また、上記ポイントの6番目の「2倍速で聴く」やり方は、まさに私もやっていたこと。
ただし、私の場合は授業ではなく、覚えたい理論を自分で録音して倍速化していたのですが、当時のテクノロジーでは1.5倍が限度(ビデオデッキでやっていたので)でしたがw
◆とは言え、勉強本マニアからすると若干疑問点があったのも事実です。
たとえば、私は理論暗記を風呂の中でよくやっていたのですが、山口さん曰く「お風呂の時間は記憶には適さない」とのこと(本来リラックスする所なので)。
また、「マーカーを引くのが嫌い」なのは「蛍光ペンで引いたマーカーはよっぽどのことがない限り消えない」からのようなのですが、山口さんが司法試験を受験された頃と違って、今はこういう製品もあります。
パイロット フリクションライト 3色セット
……欲しくなって、今注文してしまったんですがw
さらに、「語呂合わせ」についてもネガティブであり、その事例として、ご友人で英単語も語呂合わせで覚える方が出てくるのですが、何でも語呂合わせでやったり、まったく使わないのではなく、適切な語呂合わせのみ使えばいいだけのこと。
もっとも、語呂合わせがもっとも効果を発揮する「年号」こそ、まさに「時系列」であり、山口さん的には、本書で提唱する「ストーリー法」で覚えて欲しいのでしょうが。
◆山口さんの場合、塾講師等ではないため、そのメソッド自体は「ご自身の勉強スタイルに則したモノ」になります。
「『7回読み』勉強法」も、私はやったことがないため、いまいちピンと来なかったのですが、2チャンネルでは実践して成績アップした勇者が登場。
【驚愕】東大主席が考案した勉強法を3ヶ月実践してみた結果wwwwww - かれっじライフハッキング
ですから本書のTIPSも、合う、合わないはご自身でお確かめ頂くのが良いと思います。
いずれにせよ、正解を求めた結果「ほとんどの内容が類書とかぶっている」勉強本よりは、読んでいて面白い作品でしたw
勉強本オタクなら、避けては通れない作品です!
誰でもできるストーリー式記憶法
序章 記憶に才能はいらない【山口真由流・記憶の基本】
第1章 ゼロからの知識を覚える方法【勉強・教養・受験・資格試験編】
第2章 仕事で必要なことを覚えておく方法【仕事編】
第3章 「正しく」覚える方法【山口真由流・記憶のメンテナンス法】
第4章 普段の何気ないことを覚えておく方法【日常生活編】
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【編集後記】
◆厳密には勉強本とは違うのかもしれませんが、このような作品が。学び続ける理由 99の金言と考えるベンガク論。
当ブログ的には、チェックしておく必要がありそうです。
ご声援ありがとうございました!
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