本日(2014/9/19)iPhone6が販売開始となりましたので、改めて、Appleのサイトで公式に公開されている
iPhone6の図面を分析し、実際、その図面から3Dモデリングをしてみました。
そこから見えてきた、iPhone6に対するデザイナーのこだわりを3つ紹介いたします。
1. 曲線へのこだわり
iPhone6の筐体で最も特徴的なのが側面の丸みではないでしょうか。
図面を見ると、非常になだらかな曲率連続のスプラインカーブを描いていることが分かります。
Appleのアルミ筐体製品全体でこだわっている、きめ細かなブラスト処理(Macbookのアルミ筐体のサラサラした表面)により、さらにホールド性が向上し、気持ちのよい掌への納まりとなっていると思います。
ガラス面にもスプラインカーブを描く加工を要求する設計図は製造現場泣かせ
この丸みへのこだわりはアルミフレームだけでなく、液晶ガラスにも及んでいます。
液晶ガラスの断面にもアルミフレームから滑らかに繋がる曲率連続のスプラインカーブが描かれていることが図面から読み取れます。
これは、一般的なフラットなガラス部品とは異なり、手間とコストを相当かけた隠れたこだわり部品となっています。
2. 対称性へのこだわり
Apple製品はどれも高い対称性があり、程よい緊張感と高級感のあるデザインとなっています。
iPhoneシリーズもその例に漏れず対称性の美しいプロダクトです。
iPhone6底面のLightningコネクタとその周辺部品はiPhone5Sと同じく筐体中心からわずか0.005mm上面に配置されています。
完全な中心では無いことに驚くかもしれませんが1/1000mmオーダーでの設計は驚異的です。
光を扱うカメラ内部の設計でさえ1/1000mmオーダーを要求することは珍しいぐらいです。
完全な中心にできないのは内部的な制約?それでも0.005mmまで追い込んだ設計図は製造現場が大泣きだっ!
とはいえ対称性へのこだわりはiPhone5Sと変わりないようにも思われます。
しかし、図面をよく見るとiPhone6の筐体中心はガラス面が含められています。
iPhone5Sの筐体中心はアルミフレームの中心です。
そのため、ガラス面を含めた場合、iPhone5SのLightningコネクタの位置は中心から0.245mm下面方向に設置され、iPhone6は0.005mm上面方向の設置されている事になります。
つまり、プロダクト全体として見た場合、iPhone6はiPhone5Sよりも対称性にこだわったデザインと言えるかも知れません。
※対称性へのこだわりという観点では、カメラの出っ張りが非常に気になりますが…
3. クリアランスへのこだわり
プロダクトを設計する際、筐体と部品の間には必ずクリアランス(隙間)を設定します。
これは工業製品といえども、部品の大きさが一定でなく、その誤差を吸収するためです。
他にも、組立工程のコストや歩留り率の向上などクリアランスを設定するとビジネス的にメリットが沢山あります。
プロダクトの大きさにもよりますが、スマートフォンなどの精密機器ではクリアランスの設定は0.15〜0.25mm程度が一般的です。
しかし、iPhoneシリーズは非常に厳しいクリアランスを設定し、プロダクトデザインとしての完成度を高めています。
例えば、ボタン類(電源とボリューム)。
iPhone6はクリアランスが0.05mmに設定されており、ガタつきを殆ど感じず、気持ち良い操作感が得られます。
これはiPhone5Sから継承されています。
その結果、ボタン操作に関するユーザ体験を非常に高めることができています。
同じくユーザが操作する部品として、ミュートスイッチがあります。
iPhone5はミュートスイッチのクリアランスが0.15mmに設定されていましたが、iPhone5Sでは0.1mm、iPhone6ではさらに微細な0.05mmまで精度が高められています。
ミュートスイッチはiPhoneのバージョンが上がるたびに要求精度が高くなっている面白いパーツ
iPhone6ではユーザが操作しないイヤホンジャックのクリアランスまでも0.05mmに設定しています。
iPhone5Sでは0.2mmでしたので、iPhone6はほぼ隙間のない筐体となり、Appleの美学を感じます。
唯一クリアランスが0.2mmに設定されているのがLightningコネクタです。
コネクタのクリアランスは衝撃吸収の役目も果たすのでクリアランスが0.2mmのまま?
プロダクトデザインでは、ケーブルにかかる負荷を軽減する目的でコネクタ類にクリアランスを設定する事があります。
その他の事情があったのか明らかではありませんが、Linghtningコネクタは一般的な0.2mmのクリアランスが設けられています。
いずれにせよ、iPhone6のプロダクトデザインの美しさはiPhone5Sから一歩向上していると言えます。
蛇足
iPhoneで0.05mmという微細なクリアランスを設定できる一つの要因として、iPhoneの筐体と部品がアルミ切削加工であること挙げられます。金型製造の場合、抜き勾配の制約があるため0.05mmというクリアランスを設定することが難しいことが殆どです。
あとがき
アップルのオフィシャル図面を読み解きながら3Dモデリングすることで、デザイナーの想い、創意工夫、こだわり、苦労を体感することができました。
深くない私の図面知識(デザイナー独学レベル)でも、ここまで読み解くことができます。
特にアップル製品はシンプルそして秀逸なので、図面も分かりやすく読み解きがいもあります。
ついつい引き込まれてじっと見入ってしまい、3Dモデリングにも熱が入り気づいたら深夜に…
みなさんも、ここ最近でぐっと身近になった3D CADソフトや3Dプリンターを活用しながら、つくり手の思いに触れるものづくりの醍醐味に触れてみてはいかがでしょうか。
きっと新たな発見があると思いますよ。
おまけ
今回モデリングした3Dデータ(STLに変換済み)は下記からダウンロード出来るようにしておきました(rinkakアカウントが必要ですw)。
https://www.rinkak.com/item/yokoyasu/5346459763343360
上記プロダクトページの右カラムのダウンロードボタンをご利用下さい。
iPhone6のSTLデータをReplicator 2Xで3Dプリントしてみた