米連邦準備制度理事会(FRB)が、米国債などを買って市場に大量のお金を流す量的金融緩和策を10月に終えると決めた。経済が順調に回復することが条件だが、実現すれば、米国の金融政策は節目を迎える。

 FRBが現在の量的緩和策の開始を決めた2012年9月には8%ほどだった米国の失業率が、今年8月は6・1%に低下。米経済がデフレに陥る懸念も遠のいた。緩和策に一定の効果があったと言えるだろう。

 一方、カネ余りの副作用で、金融市場ではバブルを思わせる動きも見える。FRBのイエレン議長は17日の記者会見で、08年以来とってきた金融危機対応の異例の政策を振り返りながら、「この間ずっと、より伝統的な方法に戻ろうとしてきた」と述べた。量的緩和策の終了は、その大きな一歩となる。

 ここまでの歩みは順調だったわけではない。バーナンキ前議長が昨年6月、量的緩和の終了に向けたスケジュールに言及した際は市場が動揺。9月に始めると見られていた緩和縮小を見送った。

 昨年末に緩和縮小決定にこぎつけた後の今年2月に就任したイエレン議長は、慎重に歩を進めた。6月の記者会見で、金融政策の「正常化」について連邦公開市場委員会(FOMC)で議論していることに言及。7月に公表した、6月のFOMC議事要旨で、量的緩和策の10月終了を見込んでいることを明らかにした。

 今回はFOMC声明に、緩和策の10月終了方針を明記。同時に、金融政策正常化のための基本方針を公表し、量的緩和のために買った国債などの売却についての考え方などを説明した。

 今回の決定は、イエレン議長にとって最初の大仕事となったが、これで終わりではない。08年からのゼロ金利を「相当の期間」続けるとしているが、いつ利上げに踏み切るのか、どんなペースなのか。慎重な判断とともに、これまで以上に丁寧な情報発信が必要になる。

 FOMCも一枚岩ではない。今回の決定には10人のメンバーのうち、より早期の利上げなどを主張して2人が反対した。景気について慎重な見方をするイエレン議長がどうまとめていくか、手腕が問われる。

 日本では物価上昇率が日銀の目標に届かず、消費再増税の判断も控える。日銀を取り巻く環境はFRB以上に厳しいが、いずれ訪れる「異次元」の金融緩和終了に向け、FRBの政策正常化から学ぶべき教訓をくみ取ってほしい。