これは光合成ではなく、もっぱら有機物を食べるタイプで、多くのエサが必要になるが、搾りかすがエサに使える。ボトリオコッカスはオイル生産コストの低減が課題だが、オーランチオキトリウムと組み合わせることで、新たな可能性が開ける。
オーランチオキトリウムは従来の10倍以上の効率で、やはり様々な利用が可能な炭化水素を生産できる。特に「スクアレン」という化粧品などに使われている高価な原料が豊富。「直径30メートル、深さ10メートルのタンクで培養すれば、年間約500トン。日本のスクアレン需要をまかなえるほど」(彼谷特任教授)と見積もる。
これにとどまらず、さらに大量生産して燃料や化学製品原料に利用することを目指す。大規模培養時のオイル生産コストは1リットル当たり50円と研究グループはみており、実用化に向けて有望。ただ、「これは試算なので実証しなければならない。まずタンクで培養実験をして、性質や適した条件を突き止める」(渡辺教授)考え。
その後、実証規模に拡大する予定。エサとなる排水の処理と組み合わせる構想もある。オーランチオキトリウムの搾りかすは相変わらず残るが、これもガス化して利用する案がある。
石油化学産業は原油を出発点に様々な原料を作り、燃料や化学製品に至る。これになぞらえれば、再生可能な光エネルギーと水、二酸化炭素による光合成から燃料や製品を無駄なく作るのが藻類産業の大きな骨格だ。筑波大は今年、企業などと「藻類産業創成コンソーシアム」も結成しており、産業化に向けた研究開発が一気に進むかもしれない。
もっとも、日本でこうした藻類の応用研究が進んでいるのは、長年の基礎研究の蓄積が大きいと言える。にわか研究で都合の良い藻類を見つけられるものではないし、ボトリオコッカスとオーランチオキトリウムで終わりでもない。
「まだまだ探せば、すごい藻類がいると思う。優秀なものを見つけることは、いずれ国を左右する」と井上教授は指摘する。基礎から応用まで一体となった推進が重要になっている。
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