筑波大学を中心に、オイル(油)を採取できる藻類の研究が加速している。バイオ燃料にするだけでなく、化学製品の原料にもなり、そのまま石油の代替に使えるのが利点。石油化学産業ならぬ「藻類産業」を目指している。もともとは地味な基礎研究の分野が次世代産業へと大きく発展しようとしている。
13~14日、筑波大で藻類の国際会議「第1回アジア・オセアニア藻類イノベーションサミット」が開催された。日本と韓国、中国、タイ、オーストラリア、ニュージーランド、米国、さらに欧州の代表格のオランダから研究者や政府関係者らが参加し、研究成果や政策を発表し合った。
「どの国も熱心。各国ともけっこう取り組みを進めていることがお互いによくわかった」と筑波大の井上勲教授は話す。次回は2年後の予定だが、早くも3カ国が開催地に名乗りをあげた。それだけ会議の成功ぶりと各国の力の入れようがうかがえる。
筑波大では藻類と太陽光発電、風力発電、燃料電池を組み合わせた複合的なクリーンエネルギー実験施設の建設が進んでいる。次世代環境エネルギーの国際研究拠点を目指す。
ここでは例えば、オイル生産に有望な藻類「ボトリオコッカス」を効率的に培養する技術を開発する。培養装置の1つは、ずらりと並んだ藻類培養パイプを支柱で高く持ち上げた構造。太陽の方向を追尾してパイプを向け、藻類の光合成を活発にする。夜間も太陽光発電などの電気で照明を当てて光合成を続ける。
「ボトリオコッカスのオイルは純粋な炭化水素。燃料だけでなく、樹脂など石油化学製品の原料としてもそのまま、既存のプラントで使える」と彼谷邦光特任教授は説明する。邪魔な酸素や硫黄などを取り除く必要がないのも利点だ。
ボトリオコッカスは有機物を含む排水をエサにしてオイル生産効率を高めることもできる。オイルを採取した後に藻類の搾りかすが残るが、これも無駄にしない。
ナノテクノロジーを応用した触媒を開発し、搾りかすから水素を生産することを考えている。水素は燃料電池に使える。さらに渡辺信教授や彼谷特任教授らは最近、新たな有望藻類「オーランチオキトリウム」を発見した。
藻類、バイオ燃料、筑波大学、クリーンエネルギー、培養装置、炭化水素、藻類産業創成コンソーシアム
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