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おとぎ話の、その後で 作者:灯乃

ご挨拶に行くことになりました

 そうしてヴィクトリアがこっそり胸の裡で手を合わせていると、シャノンはふと何かを思い出したように声のトーンを上げた。

『そういや、こんな話をするためにおまえに連絡したんじゃなかったんだった。――おまえ、次の休みになんか予定入ってるか?』

「いえ、そんなことはありませんが。何かご用でしたか?」

 随分長い前フリだったなーと思いつつ答えると、シャノンはそうか、と笑った。

『うちのじーさんが、今回見に来てたのは知ってんだろ? で、あのひとがおまえを――うちの新しい被後見人を見てみたいって言い出してな』

「はぁ。ご挨拶に伺わなければならないということですか」

『そういうこと。この間、おまえがミュリエルにやった小鳥の魔導具を見てから、すっかりその気になっちまったらしい』

 もしや、あの英雄さまも孫娘と同じ可愛いもの好きだったりするのだろうか。

 そういうことならば、こちらの立場としては従うしかないのだが――。

「……あの、シャノンさま。ひとつお願いしたいことがあるのですが、聞いていただけますか?」

『ん? なんだ?』

 これはちょっと反則だろうかと思ったけれど、この際背に腹は代えられない。

「以前ミュリエルさまにお会いしたときに、次にお会いするときには仔猫型の魔導具をお贈りするとお約束したのですが――残念ながら、魔導石がまだ用意できていないのです」

『……それを、オレに寄越せってか?』

 シャノンの声が、低くなった。

 たとえフェアリーな恋愛ボケをしていても、シスコンなところは現状維持しているらしい。

 ヴィクトリアは、できるだけ穏やかな声で告げた。

「融通していただけると、助かります。まあ、いただけなくても少しばかりミュリエルさまをがっかりさせてしまうだけのことですので、無理にとは申しません」

 可愛い可愛い妹さまの喜ぶ顔を見られるかどうかは兄のアナタに掛かっているのですよー、さあどうなさいますかーという脅しに、しばしの葛藤の後、シャノンは屈した。

 さすがは重度のシスコン。ちょろい。

『……分かった。用意しておく』

 実におどろおどろしい、地の底から響くような声である。

 ヴィクトリアはちょっぴり怖くなった。

「ご心配なさらなくても、わたしは自分の立場を十分弁えておりますよ?」

 恐る恐る言うと、シャノンはちっと舌打ちした。

『……あいつがあんな嬉しそうな顔をしてるの、初めて見たんだよ』

「はぁ。それは、兄君としてはかなり情けないのでは」

 ずっと一緒に育った兄妹のくせに、一体今まで何をしていたのだろうか、このアニキは。

 思わずうっかり本音を漏らすと、シャノンが一層不機嫌そうな声になった。

『やかましい。……ミュリエルは、今でこそ大分外を出歩けるようになったが、昔から体が弱くてな。いつも周りに気を遣ってばかりで、友達と文通をするのが唯一の楽しみなんだ。そんなあいつが、おまえからもらった小鳥を見てはそりゃあ嬉しそうな顔をするんだぞ。オレがおまえに多少嫉妬したからって、仕方のないことだとは思わんか?』

 ミュリエルはただの美少女ではなく、病弱な薄幸の美少女だった。

「……失礼いたしました。今回お贈りする魔導具の素体となる魔導石はシャノンさまからいただいたものだと、ミュリエルさまにはきっちりお伝えいたしますね」

『いや……まぁ……それは別に、いいんだが。うん。オレは、ミュリエルが喜んでくれれば』

 なんだかもごもご言っているけれど、微妙に嬉しそうな声のトーンが彼の本音を如実に表していた。

 そんなわけで次の週末にラング家へ出向くことになったヴィクトリアは翌日の教室で、貴族のお屋敷に平民がご挨拶にいくというのがどんなものなのかを経験者たちに訊いてみることにした。

「ランディたちは、後見されている貴族のお屋敷に挨拶に伺ったことはあるのですか?」

 若干の好奇心を乗せた問いに、平民出身のクラスメイトたちは一瞬顔を見合わせてから苦笑を浮かべた。

「まぁ……『楽園』の入学が決まってから、一度行ったけどな。あんまり楽しいモンじゃなかったぞ?」

 代表してランディが言った言葉に、周囲もうんうんとうなずく。

「オレらを後見する貴族ってのは基本的に、子どものデキがあんまりよくねーから仕方なく、って連中ばっかだからなぁ」

「あ、オレは来なくていいって言われたんで行ってません」

「何ソレ、ずりい!」

 屈託なく笑い合う彼らの様子を見て、その体験談があんまり役に立たないことを知ったヴィクトリアはがっかりした。

 とはいえ、貴族のお屋敷訪問をしたことのある彼らの話を総合したところによれば、制服で伺えば問題ないということは分かったし、それだけでも収穫というものなのだろう。

 ランディたち魔力持ちの平民と貴族たちとの後見契約というのはほとんどが代理人を介して行われるため、お互いの顔を知らないというのも決して珍しい話ではないらしい。

 馴れ合う必要などない、書類上の関係さえあれば、後見した相手の功績は自分たちのものとなるのだから問題ない――そういった貴族は、決して少なくはないのだと。

「昔っから続いてる武門の貴族だと、後見した相手とも結構話をしたりするらしいけどな。その代わり、親から『役立たず』認定された子どもの嫉妬がスゲー怖いって噂」

「ちょ、やめてくんね? オレんとこ、かなり古い武門の家柄だって聞いてんだけど! マジでシャレになんねーから!」

 やはり平民が貴族の後見を受けるというのは、いろいろと大変なことがあるらしい。

 そうなると、つくづくシャノンとリージェスの対応はあまり一般的ではないように思うのだが、彼らは自分自身があまりにも優秀であるために、きっとそういった卑屈な感性とは無縁なのだろう。

 人生において、心の余裕というのは実に大切なことなのだな、と改めて感じ入ったヴィクトリアは、少し悩んだ末にリージェスに相談してみることにした。

 彼ならばラング家にもよく出入りしていたことだろうし、訪問時に気をつけた方がいいことをご教授してくれるに違いない、と思ったのだが――。

『――ラング家へ挨拶に行く? おまえが、シャノンとふたりで?』

(……あるぇ? なんでそんなにお声がブリザードですか、リージェスさま?)



みなさま、こんばんは。
アルファポリスファンタジー小説大賞投票期間も、とうとう折り返し地点になりました。
これまでに応援ぽちりをくださったみなさま、ありがとうございます!
お陰さまで予想以上に本作が健闘できておりまして、本当に心からお礼申し上げます。
ですが、勝負はまだまだこれから……!
やるからには全力で勝ちにいく、それが勝負の基本というもの。
ハイ、かなり負けず嫌いです、わたし。
今までも散々あちこちで「あいあむ・応援乞食!」と叫びまくっている鬱陶しい作者ではございますが、ここまで来たら全力で最後まで叫び続けようと思います。
いえ、もちろん作者が一番するべきことはハズしてはいけませんし、毎日頑張って作品の続きを執筆しておりますのですが(汗)。

……だって黄色い投票ボタンをぽちっと押していただけると、500ポイントという大量ポイントとなるのですものー!
えぇと、まだご存じではない方もいらっしゃるかと思いますが、投票した方にも抽選で一万円の賞金が当たります。
これは経験者が語りますが(一度当たったことがあるのですー。うふふー)、賞金の受け取りもすべてネットで手続きができますので、ご家族に知られたくない方でも大丈夫☆

アルファポリス様に市民登録されていない方には、市民登録した上で再度ぽちり、という二度手間をお願いすることになると分かっていても、ここは恥を忍んで叫ばせていただきます。

「みなさまー! 黄色い投票ボタンへの清き一票を、どうぞよろしくお願いいたします!」

ただ残念ながら、もし黄色いボタンをぽちってくださった方がいらしても、こちらからはどなたがぽちってくださったかは分からないのです……。
なので、非常に厚かましいお願いだとは重々承知しておりますが、もしぽちってくださった方がいらっしゃいましたら一言「ぽちったよー」とお知らせくださいますと、作者のテンションがダダ上がります。
それだけで、頑張って続きをもりもり書く勇気と燃料が萌えの海から湧いて参ります。
作者にとって読者さまの応援ぽちりは、シャノンに対する「リアの情報、教えてア・ゲ・ル♪」という囁きと同じレベルのエサなのでございます(真顔)。

重ねてになりますが、ほんっっとうに、どうぞよろしくお願いいたします!
あいあむ・応援乞食ー(平身低頭)!

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