この勇姿を待っていた。ガッツポーズをつくった広島の前田は、雄たけびを上げた。4−0の6回2死三塁。橋本をスライダーで空振り三振に仕留め、感情を爆発させた。
初回こそ制球に苦しんだが、2回以降は最速151キロの直球とスライダーを軸に、5回まで無安打。米大リーグ10球団が視察する中、8イニングを2安打無失点。今季6戦目で巨人戦初勝利だ。お立ち台では「負けられない戦いは続く。腕がちぎれてもいいくらいの気持ちで投げます」と、本拠地の鯉党を沸かせた。
長女の1歳の誕生日だった12日は甲子園で阪神戦だったが「移動前にお祝いをしました」。昨年も長女が誕生した直後に白星を挙げており、今年も“勝利の女神”に応えた。
この日は敬老の日。お立ち台から引き揚げる際、スラィリー人形を客席のファンに手渡した。「いつもなら子どもにあげるんですけど、おばあちゃんに渡しました」。マエケンらしい心配りだった。
首位巨人とは4ゲーム差。残り15試合。野村監督は「本当にいい投球だった。3連戦の頭を取れたのは大きい。残り2試合、最高の形で頑張りたい」とキッパリ。3連勝しか見ていない。前田も「3つ勝てばゲーム差は縮まる。不可能な数字じゃない」と共鳴。奇跡的な逆転優勝へ、エースがチームに勇気を与えた。 (山本鋼平)