photo by Natalia Romay Photography
もう二十ウン年前、高校生だったころ、私とM君は良く一緒に帰宅していました。
同中だったので、高校~駅~地元まで一緒です。
さて、高校を出て駅に行くまでに一件の書店があり、良く立ち寄っていました。
私もM君も本好きで、いろんな本を読むのですが、そこはお年頃の男子。雑誌コーナーにある「いわゆる思春期の男の子がたいへん好みそうな本」が気になって仕方がありません。
しかしその書店、アルバイトでしょうか。うら若き女性がレジに立っているのです。
「この本、買ったら、なんか変な顔されそうやな…。レジの人、かわってくれへんかな…」
件の本を手に入れたいのですが、羞恥心がじゃまをして、ヘタレな私はレジに行く勇気が出ません。
そんな時、M君は件の本を手にして、スタスタとレジまで歩いていくではありませんか!
あぜんとする私を尻目に、顔色を変えることなくゆうゆうとブツを手にした彼は、一人書店を後にします。
「なあなあ、レジ、女の人やったやん。恥ずかしかったんちゃう?」
追いすがった私。道すがら聞くと、彼はこう答えました。
「別にええやん。結婚するわけやないし」
ガビーン!
マジで衝撃を受けました。今でも彼のこの言葉は忘れません。そうなんです。その女性と結婚するわけではないのです。走りながらパンをくわえた女子高生が曲がり角でイケメンの転校生にぶつかって恋に落ちることはあっても、件の本を持った私がレジのお姉さんと結婚することは100%ないのです!何を心配することがあろうものか!(いや、ない!)
その言葉に勇気をもらった私が、その後、ブツ購入に何の障害もなくなったのは言うまでもありません。
高校卒業以降、会うことも無くなってしまいましたが、M君、元気にしているかな?
この場を借りてお礼を伝えます。ありがとう!M君。
※実話です。