「まるで魔法!」注目の認知症ケア技法「ユマニチュード」の秘密
『ユマニチュード入門』(医学書院)
「ユマニチュード」をご存知だろうか。なんとなく哲学的な響きをもつ言葉だが、これはフランスで生まれた認知症ケアの技法。最近、看護や介護などの現場で劇的な効果をあげ、「魔法のようだ」と注目を集めている。
たとえば、保清・清拭は、ケア業務の半分を占めると言われるものだが、ある介護施設では、ユマニチュードによるケアの導入で、ベットで行う清拭が60%から0%になったという。
また、どんなにベテランで有能な看護師が対処しても手に負えない、いわゆる「困った患者」が、ユマニチュードを学んだ看護師のケアでは、まったく別人のように穏やかにケアを受け、笑顔で「ありがとう」とお礼まで言ってくれた。さらに、ユマニチュードを導入した別の施設では、認知症患者の攻撃的で破壊的な行動を83%減らせたとの報告もある。
そして、今年の2月には、NHKの番組「クローズアップ現代」でユマニチュードの創始者のひとり、イヴ・ジネストらのケアによって、歩行が困難とされていた患者が短期間で立てるようになる様子が紹介され、大きな反響を呼んだ。
本当ならば、まさに「魔法」だが、いったい、具体的にはどんな技術を使っているのだろう。来たる大介護時代に役立てようと、そのジネストの著作『ユマニチュード入門』(共著者・本田美和子、ロゼット・マレスコッティ/医学書院)を読んでみた。
まず、そこに書かれていたのは「見る」「話す」「触れる」「立つ」という、ごくありふれた、誰でも日常に行っている動作。この4つの援助がユマニチュードの基本の柱だという。
え? それって魔法なの? シンプル極まりない内容に、一瞬、肩すかしをくらった感じがしたのだが、しかし、同書を読み進めていくと、いかにこの4つの行為が重要な意味を持っているかがわかってくる。しかも、自分が日常のコミュニケーションでこの簡単な行為をいかにこなせていないかも。
技術の説明は具体的だ。例えば、「見る技術」。同じ目の高さから、顔を近づけて(0.4秒以上)見つめる。ただ見るのではなく、こちらから視線をつかみにいく。ベッドで壁の方に横向きになったままの患者さんなら、ベッドを動かし、壁との間に入ってでも、視線を合わせにいく。ちょっとやり過ぎなのでは?と思うけれど、視線をとらえられないまま話しかけてもなかなか通じないのだという。そして、視線があったら2秒以内に話かける。その事でこちらに攻撃的な意図はない事を伝えられる。
また「話す技術」では、反応のない患者さんに言葉をかけ続けるための、「オートフィードバック」という方法を教授してくれる。「これから腕を洗いますね」と予告し、そして腕を上げながら「腕を上げます。左腕です。とてもよく伸びていますね」と実況中継することで、相手に反応がなくてもコミュニケーションを持続させるエネルギーを作り出すのだという。
「触れる技術」も丁寧でわかりやすい。触れる時は飛行機が着陸するイメージで、離す時は飛行機が離陸するイメージで行う。そして、「立たせる技術」では、「40秒間立つことができたら寝たきりは防げる」と、立つことの重要性を説いたうえで、まず握手することから始まる介助のテクニックを事細かに説明してくれる。
ユマニチュードは、全部で150をこえるこういった実践技術に基づいて成り立っており、だからこそ誰にでも実行でき、魔法のような効果をあげているのだ。
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