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R18兄様の花嫁 作者:kay

12

 仮面の目の部分に嵌め込まれているのは紅玉なのに、見える景色は普通のまま。赤く色づくことはなく、まるで仮面をつけていないかのような気分だ。
 屋敷の廊下は広く、どこまでも続いている。兄様は迷いのない足取りで迷路のような道を歩んだ。
「一応妖の格によって入れる場所というか、集まる部屋は違うんだ。僕らが招かれたのは最上階の四階だよ」
 格ということは、妖力の大きさで決まるということだよね。異形の会合なのにそんな決まりがあるなんて意外だなぁ。
「同程度の力量を持つ者達が集まれば、要らぬ争いは少ないからね。と言っても、稀に大妖の部屋に乗り込んでくる愉快な者も存在するけれど」
 兄様は楽しそうに告げた。
「それは何というか……勇者ですね」
「勇者! そうだね、そう言えるかもしれない」
 私の言葉に兄様は声を上げて笑う。どうやら兄様のツボを突いたらしい。
 屋敷内に蠢く妖気は、兄様が進むたびに濃度を増す。襖の向こうから他の異形達の気配を感じるけれど、兄様が側を通ると静かになり、遠ざかると再びざわめきを取り戻す。
 そんなことを何度か繰り返したけれど、階が上がるほど兄様の妖気に反応する異形は少なくなった。
 ――ううん、違うな。怯える妖は少なくなって、探る気配が強くなっているという方が正しいかも。
 私はより衣を深く被ると、兄様の肩をぎゅっと握りしめた。
 四階に満ちる妖力の大きさが、これまでとは格段に違う。
 ――怖い。
「大丈夫だよ、リキ。大妖となれば、そこまで好戦的なものはいない。まあ、皆喰えない連中ばかりだが」
 わずかに震える私を、兄様はあやすように背中を叩いた。
「会合では面白いものを見たり聞いたり食べたりできるからね。お兄様と楽しもう。ね?」
 襖の一歩手前、そこで立ち止まり微笑む兄様に、私はしばらく沈黙した後、そっと頷いた。
「兄様が居てくだされば、リキは大丈夫です」
「愛らしいことを言ってくれる。すべてお兄様に任せなさい。君はゆったりとくつろいでいて」
「はい、兄様」
 そして兄様の手が襖にかかり、ゆっくりと開かれた。
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