[インタビュー]

APIが価値・利益を生む時代が到来、「APIエコノミー」の実像

2014年9月16日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

API(Application Programming Interface)−−。プログラミングの用語であり、何となく難しい印象がつきまとう。だが今日、そうした考えは払拭しないといけない。「APIエコノミー」と呼ばれる新たな”経済圏”が生まれつつあるからだ。米IBMのビジネスストラテジストであるAlan Glickenhouse氏(ソフトウェアグループのAPI Management Product Manager)に、その実像を聞いた。(聞き手は田口潤=IT Leaders編集)

 「API(Application Programming Interface)マネジメント」という言葉を、お聞きになったことがあるだろうか?Webサービス事業者がAPIを外部に公開して利用に応じた収入を得たり、外部のAPIを呼び出すことで自社のシステムやサービスの機能を強化したりすることの意味だ。つまり「一部のWeb事業者が収入を得たり、アプリケーション開発を簡単にしたりするためのもの」と筆者は考えていた。

 しかし、9月中旬に来日した米IBMのビジネスストラテジストであるAlan Glickenhouse氏によると、「もっと包括的で企業のビジネスや事業に直結するものだ」という。「APIマネジメントは技術の側面だけでなく、APIエコノミーという新しい価値創出の側面がある。今日、焦点になっているのは後者だ」(同)。

 これが事実なら、CIO(Chief Information Officer)をはじめとするITリーダーは是非ともAPIマネジメントを理解し、場合によっては実践する必要がある。APIマネジメントの実像を同氏への一問一答形式で紹介する。

−−APIマネジメントを簡潔に説明すると?

 APIという言葉は昔からあるが、今日ではビジネスAPI、WebAPIを指す。そのマネジメントには2つの面がある。技術的な側面と、「APIエコノミー」と言われる新たな価値創出の側面だ。焦点は後者なので、そこから説明しよう。

図1:ビジネスAPI展開とバックエンドシステム統合の位置付け図1:ビジネスAPI展開とバックエンドシステム統合の位置付け
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 始まりはモバイル対応だった。企業の情報システムに社員がモバイル機器からアクセスできるようにするのは当然だ。だが、そのために情報システムを変えるのは得策とは言えない。モバイル機器やそのアプリケーションは毎月のように変わるが、情報システムはそうではないからだ。そこで図1のようにゲートウェイを設置し、APIを介してアクセスする形が生まれた。

−−SOA(サービス指向アーキテクチャ)では、情報システムを疎結合にし管理性や柔軟性を高めてきた。そのアプローチを社外のシステムに適用するということか。

 その通りだ。セキュリティや利用者管理の問題もゲートウェイのところで吸収する。当初はモバイル機器だけだったものが、APIを介して様々なものがつながるようになりつつあるし、なっていく。ウェアラブル機器、自動車、冷蔵庫もそうだ。M2M(Machine to Machine)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)とも言えるし、他社のシステムやサービスもつながる。

 SOAの時代には、コンポジット(複合)アプリケーションという考え方があった。APIマネジメントが可能にするのは、パブリックなコンポジットアプリケーションだ。

−−APIエコノミーの具体例は?

図2:cars.comのAPIエコノミーの例図2:cars.comのAPIエコノミーの例
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 cars.comという実在のサイトがある(図2)。消費者は様々なメーカーの車を購入できる。その際、自分に合った車を選ぶアドバイスを得たり、選んだ車を販売している最寄りのディーラを探したり、自動車ローンや保険を選んで契約したり、といったことができる。しかしcars.comが自ら開発した機能は全体の一部で、相当数の機能を外部に依存している。

図3:cars.comにおける銀行側から見たAPIエコノミー図3:cars.comにおける銀行側から見たAPIエコノミー
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 これを可能にしているのがAPIである。ディーラ網もローンも、保険もAPI経由だ。図2はcars.comを中心にしているが、銀行の視点からすれば、自動車ローンだけではなく、住宅ローンもあれば財務管理のAPIも提供している(図3)。APIを公開すればビジネスチャンスを大きく拡大できる。これが、すなわちAPIエコノミーになる。

 このような例がたくさん出てきている。例えばPitneyBowesという郵便関連機器の会社が外部に提供しているAPIを使うと、利用者は何かを送る前に住所が正しいかどうかをチェックできる。

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