03
雪が、降っている。
まるで空から凍える地上にばら撒かれた花びらのように、それは世界を真白に染めた。
「フードはちゃんと被ってね」
「手袋とマフラーもしろよ」
「ちょっとでも体調がおかしいと感じたらすぐに言うこと」
「無理はすんな。というか、祭り見たいがために嘘吐くなよ」
アルセーヌとリオネル、二人して交互に声をかけてくる。まるで本当の母親のよう。私は何度目かになる言葉を口にした。
「分かっていますとも。だから早く行こう、ね?」
馬で街の宿屋に着いてから、私は逸る心を抑えて二人の少年を急かしていた。
遠目からでも分かる艶やかな衣装を着た乙女や奇抜な衣装に身を包んだ芸人、通りに並ぶ露店の数々。そして楽しげに道を行く人々。
なんて活気に満ち溢れているのだろう。村とは比べ物にならない。
「じゃあ行こうか」
「おう」
外に出れば、冷たい空気が肌を刺す。吐息も白く染まる。
「あれは?」
教会に並ぶ人々を見つめ、私は首を傾げた。
お祭りだから神様に祈りを捧げに来たのだろうか。
「あれは加護を授けてもらっているんだ。幼い子供達が無事冬を越せますようにってね」
「なるほど」
確かにどの家族も子供連れで、中には赤子を抱えている女性も居た。
「ジュリア、あれ見てみろよ」
リオネルはくいと顎で前方を示す。そこには派手な衣装を纏った旅芸人たちが芸を披露していた。若い男の人が剣舞を披露したり、仮面を被った男性が口から火を噴いたりするたび、観客からはどよめきが起こる。
「うわぁ……!」
目深に被ったフードから眺め、私は歓声を上げた。
その様子を見ていた二人が、同じく深く被ったフード越しに目を合わせて小さな笑いをこぼしたことに、お祭りに夢中の私は気が付かなかった。
「ねえ、向こうも見に行きたい。行ってもいい?」
「もちろん、いいよ」
「まだ時間はあるんだし、あまりはしゃぎ過ぎるなよ。熱出すぞ」
二人の手を片方ずつ掴むと、私は街の中央に向かった。辿り着いたとき、ちょうど神官様の祈りの言葉が始まった。初めて聞く特別な旋律。まるで揺らぐ水のように捉えどころがなくて、美しい響き。
「これは何度聴いても飽きねえよな」
「そうだね」
頭上で交わされる言葉を聞き流しながら、私は目を閉じて祈りの旋律に浸った。
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