福島と六ヶ所村の人々が語りかける未来への提言
東日本大震災から3年を迎えようとする前に届けられた『福島 六ヶ所 未来への伝言』は、題名から察しがつくように原発について考察する1作だ。手掛けた島田恵監督は、写真集「六ヶ所村 核燃基地のある村と人々」が第7回平和・協同ジャーナリスト基金賞を受賞している写真家。その彼女が今回はムービーカメラを持ち、核燃料サイクル基地のある六ヶ所村と原発事故後の福島を取材し、市井の人々の声に耳を傾けた。
元々、フリーの写真家として1990年から2002年まで村に住みながら六ヶ所村を取材してきた島田監督。今回、映画制作に乗り出したきっかけをこう明かす。「施設の建設をめぐって、時に親兄弟や親戚の間のつながりが引き裂かれる。残された遺恨は簡単には消えない。原発を抱える町では多かれ少なかれ同じようなことがおきているはず。こういった人々の犠牲の上に原子力施設は出来ている。このことが歴史の闇に葬られてはいけない。人々の記憶に止めるためにも記録として残したいとの思いを抱き、2011年2月に撮影を始めました」。
だが1か月後、東日本大震災と福島原発事故が起きる。「こういうことが起きうる危険性が原子力関連施設にあることを世に喚起したい思いもあったので、ほんとうにショックで…。しばらくは何も手につきませんでした」。その中で思い悩みながらも、原子力発電所を原発の「入り口」として、原発から生み出される大量の放射性廃棄物の処理処分問題を「出口」としてとらえ、福島と六ヶ所村をつなげて描こうと映画制作を再開させた。作品では東京での避難生活を余儀なくされる一家、放射能の子どもへの影響を危惧して自主避難を決めた母親、六ヶ所村の漁師など、様々な立場の人を取材。各人から溢れ出す心情に向き合った。「自分としてはただただお話をお伺いするので精一杯。特にお子さんを抱える福島のお母さんにはかける言葉がありませんでした」。
実体験の言葉は重い。その市井の人々の小さな声が集まったとき、今を生きる我々に大きな問いを投げかける。また、そこからは沖縄の基地問題やこれまで日本で起きた公害問題といった社会問題の根源も見えてくるに違いない。島田監督は最後にこう語る。「いま時代の転換点に立っている気がします。次の世代を担う子供たちに何を残すのか? 真剣に考えなくてはならない。この作品が原発の問題、そしてこれからの社会について考えるきっかけになってくれたらうれしいです」。
『福島 六ヶ所 未来への伝言』
公開中
取材・文・写真:水上賢治
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