玉座の後を調査
本日、二回目の更新です。
◆
「モンスターがちっとも出てこないなぁ」
先頭を歩くコナンが、声に少し不満の色を含めて言った。
大剣を背負った大柄な少年コナン。
彼は、その大剣で遺跡のモンスターをバッタバッタと薙ぎ倒して活躍したい――と期待しているのだろう。
そして、その活躍する姿を、アメリアに見て欲しいのだろう。
もっとも。
残念ながら、この遺跡にはほとんどモンスターはいないらしいけど。
遺跡が(新大陸入植者達に)発見されてすでに何年も経っている。
その間、大人たちが遺跡に入り、何度か内部を調査した。
たいして予算も人員もかけていない、かなり適当な調査だったらしいけどね。
辺境の地である新大陸では、人手も予算も余裕はあまりないので。
なんにせよその数回の調査で、遺跡の中に棲んでいたモンスターたちはほぼ片づけられたのだ。
そもそも、棲んでいたのは、大したことのないモンスターだったとも聞く。
守護者的な強モンスターは特にいなかったらしい。
そのことは、この遺跡にはたいした財宝・魔道具がないことを示してもいた。
実際、調査の結果、特に何も発見・発掘できなかったらしい。
せいぜい、新大陸で数百年前にソコソコ栄えていた国の、王らしき人物の棺を発見したぐらいだ。
その棺には目も眩むような財宝が入っていた――ということもない。
かなり古いミイラが入っていただけであった。
そこそこ価値のある宝石が嵌めこまれた一振りの王錫と共に。
王錫以外にはこれといった価値のある物は、この遺跡で発見・発掘はされていない。
ガッカリ、であった。
『超』古代魔法文明時代の魔道具どころか、古代魔法文明時代の魔道具も発掘できなかったようだ。
――この遺跡は既にあらかた調査・発掘済みなのだ。
そして、年代が古いだけで、重要度・危険度とも非常に低い遺跡として認識されている。
だからこそ、冒険に憧れるコナンが『冒険者ごっご』をするには、最適な遺跡なのでもあった。
そう――これは本格的な遺跡調査・発掘でもなければ、危険と隣り合わせの冒険でもない。
ただの…………冒険(者)ごっこ・探検ごっこ、なのだ。
だからこそ、子供達だけで遺跡の中に入っているのであった。
一応、遺跡に入るのは禁止されているけどね。
まぁ、これだけ重要度・危険度の低い遺跡だし、入ったことが大人たちにバレても大して怒られないけど。
◆
「ひっ!? も、も、モンスターっ!!!」
スルトが悲鳴をあげてへたりこんだ。
腰が抜けたようだ。
「むっ! ついにでたかっ!!!」
一方、コナンは喜々として大剣を鞘から抜き、構えた。
T字路になっていた通路で、壁の影からモンスターが数体出たのだ。
牛並みのサイズである巨大なカエル――ビッグフロッグ三体。
中型犬並みのサイズである巨大なネズミ――ビッグマウス四体。
計、七体のモンスターが出現した。
大人たちが過去に行った調査で、ほとんどのモンスターは狩られているが、多少は討ち漏らしもある。
また、外から新しく遺跡に棲みだした(動物系・昆虫系)モンスター達も、それなりにいるのであろう。
「(しかし…………ショッボイなぁ)」
出てきたモンスターは、俺にとっては雑魚過ぎ、であった。
俺は、牛や馬、それに人間を餌としている巨大鳥を狩りまくっているのだ。
時には、象を鷲掴みにして平然と巣まで運んでいくこともある巨大すぎる鳥系モンスターを何度も狩っている。
その俺にしてみれば、ちょっとでかいだけのカエルやネズミなど怖くもなんともない。
強さ的には、荷物持ちをさせているロックマン(ストーンゴーレム)一体で、十分蹴散らせる程度の雑魚モンスターなんだし。
「ここは俺に任せろっ!
心の友よ、俺に補助魔法をっ!!!」
「あ、うん」
やる気満々である年長者コナンに水を差すのもアレではある。
ゴーレム無双はやめておこう。
俺は、初歩的な補助系真正魔法である《魔力の刃》を、リーダー・コナンの大剣にかけてやった。
魔力調整や魔法技術は下手な俺でも、初歩的な魔法なら問題なく使えるのだ。
コナンの大剣が、魔力による赤い光で輝きだした。
俺の魔力総量が桁外れに大きいため、補助魔法の効果も大きい。
今、コナンの大剣はそれこそ岩をも砕く破壊力になっているであろう。
さらに――
「《魔力の重鎧》」
アメリアが中級の補助系真正魔法である《魔力の重鎧》を唱えた。
《魔力の重鎧》は物理防御力を飛躍的に上昇させる魔法だ。
これで、ビッグフロッグやビッグマウスの攻撃など、蚊に刺された程度になる。
――“全員” の身体が白く輝きだした。
奴隷も含めて。
荷物持ちのロックマン(ストーンゴーレム)まで含めていた。
総魔力量はそれほどではないが、アメリアは、魔法技術・魔法知識に優れている。
中級魔法でも『対象拡大(数)』が可能であった。
また、
消費魔力量を軽減する『消費魔力軽減』の魔法技術保持者でもある。
「あ、あ、ああ、アメリアちゃんが俺に……俺の為に、補助魔法を…………」
感動に打ち震えるコナン。
いや、アメリアはこの場にいる全員に補助魔法をかけたけどね。
それこそ、荷物持ちの石人形も含めて。
「か、感じる。あ、ああ、アメリアちゃんの “愛” を」
「………………」
コナンの呟きが聞えたのか、アメリアが非常に困った顔をしていた。
アメリアは確かに、コナンのことを愛しているかもしれない。
人類愛的な意味で。
アメリアは誰にでも優しい博愛主義者だからな。
コナンの呟いた愛とは、種類が違うけど。
「あ、あああアメリアちゃんの愛に包まれた今の俺は――無敵っ!!!!」
コナンの叫びを聞き、アメリアがとても困った顔をしていた。
「うぉぉぉおぉっ!!!!」
テンションMAX状態でコナンは魔物たちに突撃した。
「喰らえ、必殺の剣っ!!!
大旋風岩斬剛剣っ!!!!!!
どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!」
大剣を振り回して(雑魚)モンスター相手に大奮戦するコナン。
元々、身体がデカく膂力に優れ、剣の腕もかなりあるコナンが、補助魔法の援護を受けているのだ。
あんな雑魚モンスター相手なら、無双であった。
「……コナン様……素敵」
コナン付きの奴隷である魔人少女ミアが頬を朱に染めて呟いていた。
夢見る乙女のような瞳でコナンを見つめつつ。、
ちなみに。
戦闘中ずっとスルトは、俺のロックマン(ストーンゴーレム)の後に隠れていた。
まぁ……いいけどさぁ。
◆
「数々の死闘を終え、ついに玉座の間にたどり着いた……な」
コナンが満足気に言った。
あのあと、何度か(雑魚)モンスターとの戦闘があった、
そして、遺跡最奥部である大部屋にたどりついていた。
玉座っぽい石の椅子があるので、一応『玉座の間』と、呼ばれている。
今回の冒険における目的地でもあった。
「じゃ、じゃあコナン様。
目的地についたことだし、そろそろ帰りましょうよ」
蒼い顔でビクビクしながらスルトが懇願するように言った。
最初の(雑魚)モンスターとの戦闘から、スルトはずっとこんな様子だ。
…………彼の股間には少し濡れた後もある。
皆、気付いているけど優しさから黙ってはいたが。
「まぁ待てスルト。
せっかくだし、我々で玉座の間を再調査しようじゃないか」
「は、はぁ。
コナン様がそうおっしゃるのでしたら…………」
気乗りしない様子だが、スルトはコナンの提案を聞き入れた。
コナンの腰ぎんちゃく的なスルトは、コナンの提案・意見に関しては、なんでもYESマンなので。
正直、そんなスルトをどうかとは思っている。
……組織によってはスルトの様な男こそ、結局は出世してしまうだろうけど。
前世で、ニートになる前の俺が勤めていたブラック的な会社も、そうだったし。
「うん、なかなか悪くない座りごこちだな」
石の玉座に座りながら、コナンが笑顔を浮かべた。
「さすがコナン様っ!
玉座が大層似合っていますねっ!
なにせ、コナン様は王者としての風格をお持ちですからっ!!!」
太鼓持ちのようにおべんちゃらをつかうスルト。
「はっはっは。
そうかいスルト」
満更でもない様子のコナン。
コナンは悪い男ではない。
が、脳筋、かつ、おべんちゃらに弱い男でもあった。
ある意味、スルトとの相性はとても良かった。
「ほらボーとするなよケインっ!!!
この部屋を隅から隅まで調査しろっ!!!
それこそ、床を舐めるように丁寧になっ!!!」
スルトが、自分の奴隷である犬耳魔人少年に対し、怒鳴るように命令した。
実に傲慢かつ偉そうな態度だった。
上にはこびへつらい、下にはどこまでも傲慢になる男、それがスルト・ホーンドという少年であった。
…………。
前世、ニートになる前に勤めていた会社の先輩の中に、こんな感じの人間がいた。
そして、その先輩は俺と仲が良くなかった。
俺が会社をリストラされたのは、その先輩による上司に対しての告げ口(俺の悪口)――が、原因の一つでもあった気がする。
……まぁ、過ぎたことだし、今さらどうでもいいけど。
◆
「玉座から『後』は俺が調べるから、ケインはそれ以外を頼む」
俺はそうケインに言った。
玉座の後(後方)を調べるのは基本である。
隠し階段があるかもしれないので。
いや、ドラクエとかコンピューターRPGだったらね。
別に本気で隠し階段があるなんて思っていない。
それほど期待もしていない。
あくまで冒険ごっこの延長として調べてみたいだけである。
せっかく、ここまで来たんだし。
「あ、ケイン。良かったらこれを使ってくれ。
床をつついて調べるのに」
俺はそう言いながら魔法の革袋から、棒をとりだした。
約三メートルの棒だ
フィートという単位でなら10フィートだ。
『10フィートの棒』であった。
「あ、ありがとうございますエニード様」
嬉しそうに尻尾を振りながら犬耳奴隷魔人ケインが駆け寄ってきた。
男のはずなのだが、美少女みたいに可愛い顔に笑顔を浮かべて。
棒を渡すとき、俺の手が、偶然、ケインの手に少し触れた。
さらに顔を赤くする犬耳美少年ケイン。
いや、なんで顔を赤くする?
「け……ケインさんは男の子。お兄様と同性の男の子。
お兄様との間に恋が生まれるはずの無い、同性の男の子。
男の子男の子男の子男の子男の子男の子男の子男の子男の子男の子」
アメリアが、必死に自分を押さえるように、なにかをブツブツ呟いていた。
◆
俺は魔法の発動体として杖を持っている。
だから『10フィートの棒』の代わりに杖の先で床をつついて調べた。
特に、玉座の後方すぐの床を念入りに。
………………ん?
あれ?
ここだけ――他の床と、微妙に音が違う……気が…………
シィル「うう……ファンタジー大賞で一位になりたいけど難しいの」
シィル「このままでは一位になれないの(泣)」
シィル「みんな、私に元気とポイントを分けてくれ、なの」
シィル「一位になれたら、ルンルンになって、ニパァと笑顔になるから!」
シィル「だから、応援よろしくお願いしますですなの」
シィル「黄色いボタンをポチッとな、して欲しいの」
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