「ねえ、知ってる?
月明かりの下で六本木ヒルズに向けてアプリを立ち上げると――
超能力、使えるようになんだってさ」
それは有り触れた都市伝説。六本木の街、学生たちの間で囁かている噂一つ。
根も葉もない流言は、しかし巨大企業lgelが配布する『Electro Carrier』と呼ばれるアプリとして実在した。
手順に従い起動せよ、君の世界は一変する──
Electro Armsを知ることで。
惹かれて試した者たちをその謳い文句は裏切らない。
次の瞬間彼らの目に映るのは、現実化した仮想データの構造物と、キャリアーと名付けられプレイヤーたち。
宙に浮かぶ巨大な正八角推。
内部に展開されたダンジョへの探索。
熱狂の中、力を競いあう闘技場。
そして、プレイヤーに与えられる多彩な武装の数々。
レベル、HP、パラメータ、スキルツリー、クラン、BBS、経験値、報酬ポイント、アリーナランクに称号──と。
そこで遭遇するのは、ゲームそのものが実体化したかのような設定ばかり。
まさにモニターの向こう側が、そっくりカタチを持ったかのような空間だった。
その非現実的な光景を前に、桐原零示は歓喜する。
「オレは、この 人生 を面白くしたい」
青臭く譲れない信条を胸に、最高の瞬間を追い求めて彼もゲームへ参加していく。
そしてそれは、やがてゲーム全体にとって大きな波紋を生み出すことに──。
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