シリア:イスラム国が台頭 親欧米の自由シリア軍劣勢に

毎日新聞 2014年08月25日 20時04分(最終更新 08月25日 23時20分)

ダマスカス近郊に展開するシリア政府軍の戦車部隊=2014年8月15日、ロイター
ダマスカス近郊に展開するシリア政府軍の戦車部隊=2014年8月15日、ロイター

 【ロンドン秋山信一】内戦中のシリアで、イラクにも侵攻するイスラム過激派組織「イスラム国」が台頭する一方、親欧米の反体制派武装組織「自由シリア軍」の劣勢が顕著になっている。自由シリア軍はアサド政権とイスラム国という「2強」との二正面作戦を強いられ、実効支配地域は縮小の一途で、正念場を迎えている。

 「自由シリア軍に高性能な兵器を供与することがイスラム国と対決する最も有効な方法だ」。親欧米の反体制派で構成する主要組織「シリア国民連合」は今月15日に声明を発表し、国際社会に向けて傘下の自由シリア軍に対する支援強化を訴えた。さらに16日には米国に対して、イラクだけでなくシリアでもイスラム国への空爆を実施するよう求めた。

 国民連合によると、イスラム国は8月中旬以降、自由シリア軍の重要拠点アレッポ郊外で攻勢を強め、次々と拠点を制圧。反体制派に同行していた日本人男性がイスラム国に拘束されたとみられるのも、こうした戦闘地域だった。24日にはシリア北部ラッカ県で、シリア政府軍がこの地域で確保していた最後の軍事拠点だった空軍基地を制圧した。

 アレッポは2012年に本格化した内戦初期から自由シリア軍が拠点としており、トルコ国境からの補給路を確保しながら、アサド政権と市街地を二分する戦闘を続けてきた。「反アサド」で一致する国際テロ組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」などイスラム勢力とも連携し、局面の打開を図ってきた。しかし、イスラム国ばかりでなく、アサド政権も5月に中部ホムスを制圧した勢いで、アレッポでも攻勢を強め、反体制派支配地域を連日空爆している。

 一方、イスラム国は既に東部デリゾール県と北部ラッカ県など国土の3割以上を実効支配。反体制派によると、7月以降、新たに6000人以上の戦闘員が加わった。

 イスラム国の「強さ」の理由は複合的だ。米専門家などによると、イスラム国のバグダディ指導者の下にはイラクの正規軍や情報機関で勤務した経験者が多数おり、軍事戦略を立てている可能性があるという。また、支配地域で取れた石油や小麦などの販売収入で潤沢な資金を得ている。支配地域でイスラム法の厳格な適用を進めていることも、思想背景が似た反体制イスラム勢力から、共感した戦闘員がイスラム国に流入する一因となっているようだ。

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