「やんなきゃ、やんなきゃ、としか考えていなかった」。がれきをかきわけながら、外部電源を原発につなぐための分電盤を運んだ。1時間の作業だけで、被(ひ)曝(ばく)線量は8ミリシーベルトを超えていた。
無名でも、爆発が止められればいいと思ってきた。ただ、今年5月、朝日新聞が「所長命令に違反」と報じたときは、東電社員のなかにも悔しがる人がいたという。
「吉田さんは本当にいい人だった。朝日新聞がどう報じようが訂正しようが、俺たちの功績も変わらない」。男性はいまも原発を離れることなく、除染作業の指揮に汗を流している。