暖流魚:ブリなど道東に続々 海面水温の高さが原因

毎日新聞 2014年09月15日 11時39分(最終更新 09月15日 13時20分)

今年はこんな魚が水揚げ
今年はこんな魚が水揚げ
秋サケ定置網で混獲されたブリ=根室市根室港で2014年9月12日、本間浩昭撮影
秋サケ定置網で混獲されたブリ=根室市根室港で2014年9月12日、本間浩昭撮影

 ◇別海にブリ、白糠にクロマグロ

 北海道東部の沿岸では今夏、ブリやクロマグロ、メカジキ、シイラなど暖流系の魚が水揚げされている。スルメイカは、不漁の道南とは対照的に羅臼(らうす)沖で5年連続の豊漁が期待されている。海面水温の高さが暖流系の魚を呼び、スルメイカは逆に高水温を避けて根室海峡に回遊しているとみられる。

 根室海峡に面した別海町の別海漁港では、秋サケ定置網漁でブリが連日のように水揚げされている。特に今月3日からの3日間は約660本(4.6トン)が水揚げされ、「漁協始まって以来」と浜の話題になった。重さは平均7キロ前後だが、10キロを超すものも珍しくないという。

 ただ浜値は1キロ300〜500円と極めて安く、秋サケの雌の半値〜3分の2程度だ。「寒ブリ」で知られる富山県では厳冬期に1キロ3000円、しけが続けば1万円以上にもなる高級魚だけに漁業者の心境は複雑だ。別海漁協の横山誠司事業部長は「ふだん取れない魚が水揚げされても、消費地まで遠くて輸送費がかさむ。ここでは食べる習慣もないし、1本もらっても余すだけ」と苦笑する。

 クロマグロ漁場は北海道では長年、日本海側だったが、太平洋に面した白糠(しらぬか)町の白糠漁港や大樹(たいき)町の大樹漁港で今夏、重さ10キロを超すものが市場に並んだ。猛暑だった昨年に続く水揚げで、釧路沖に回遊してきたのは約80年ぶり。釧路沖では日露戦争が終わった頃から約30年間マグロ漁業が営まれ、「マグロといえば釧路」と言われた時期もあった。

 ◇スルメイカ、道南で不調 海水温高く回遊か

 これに対し、スルメイカ漁は道南で極端な不漁に見舞われている一方、羅臼港での昨年の水揚げ高は過去最高(58億円余り)となり、8月下旬から道内外の漁船50隻以上が操業を続けている。

 「イカの終着駅」と言われる羅臼。かつては10〜11月が漁のピークだったが、2010年ごろから漁期が早まり、今年は例年より約1カ月早い8月下旬からスルメイカが取れ始めている。

 水産総合研究センター海洋・生態系研究センター(横浜市)の渡辺朝生センター長(海洋物理)は「道東沖の海面水温はこのところ夏から秋にかけて高い。海に何が起きているかは分からないが、大気が海を温める一方で沿岸に暖水塊ができ、暖流系の魚が入り込んでいるのではないか」とみている。【本間浩昭】

最新写真特集