2014-09-15
■[日記]花田十輝先生の思い出
いま大人気の、旧日本海軍の艦艇(プラスα)を擬人化したキャラクター(艦娘)が多数登場するブラウザゲーム『艦隊これくしょん』(以下『艦これ』)のTVアニメ版が、来年の1月から放送開始するようだ。
ようだ、と他人事みたいに言うのは、自分自身は艦これを全くプレイしたことがなく、ノベライズなどの派生作品にも一切触れておらず、軍艦の知識もほぼ皆無なため、このアニメ自体にはさほど大きな興味を抱いていなからだ。つまり、みたいも何も実際他人事でしかない。薄い本もまだそんなに読んでないしね。
わたしのことはともかく、当然のことながら艦これのファンにとってはこのアニメは待ちに待った大きなメディア展開であり、情報が公開されるたびに様々な反応が起こっているのをそこかしこで見かける。この大騒ぎに混じることができないのはちょっと悔しい。
だが、艦これアニメに対する原作ファンの反応の全てが肯定的な物ばかりでもない。以下は、アニメ版のスタッフ構成、特に脚本家陣についての不安を吐露し合うとあるファン達の会話だ。
https://mobile.twitter.com/aegiswreck/status/509331310687428610
@aegiswreck 吉野だっけ
@SHOKATU_KOMEI うん。吉野って時点で期待0不安100
@aegiswreck 花田と吉野....厄満じゃねえか
@SHOKATU_KOMEI 冗談抜きに ・大幅なキャラ崩壊 ・ドン引きレベルの鬱展開 ・特に理由もなく死ぬ人気キャラ ・ずっとウジウジしてる主人公(吹雪) ・矛盾だらけの脚本 これら全部来る可能性が、宝くじを連番で買って300円以上が当たる確率である
@aegiswreck うわああああ
@SHOKATU_KOMEI 終わってみたら嫁がアニメに出なくてよかった…とかなりそうで
@aegiswreck ありそう
@SHOKATU_KOMEI 登場確定キャラだと 赤城:ヲ級辺りとやりあって死ぬ 金剛:囮になって死ぬ 大和、陸奥:もう死んでる。回想で出る 睦月:流れ弾で死ぬ 暁:大破で無理して死ぬ とか冗談抜きでありうる。そう、花田と吉野ならね
@aegiswreck アカン
@SHOKATU_KOMEI ギルクラ…DTB二期…ビビパン…マギ…ゼノグラ……全て吉野が関わって駄作にしていったアニメ達だ。全て、全て期待されていたのにぶち壊されていったアニメ達なんだ……DTB二期は今でも許してない
@aegiswreck 戦闘が3D....吉野....ビビパン....あっ....(察し)
@SHOKATU_KOMEI ゼノグラ「フッお待たせしました」
@aegiswreck ゼノグラは花田&吉野。つまり艦これは....
@SHOKATU_KOMEI 始まる前から死亡確定って事になるな! どうしてこうなったってか吉野はそろそろ業界から追放されろや…
@aegiswreck 花田もな
@SHOKATU_KOMEI 花田、吉野、マリーは見えてる核地雷製造工場とすら言われてるのになぜ起用した…
@aegiswreck 知名度でしょ
@SHOKATU_KOMEI マイナスとマイナスは足してもマイナスなんだよ…
アニメ版に対する期待と不安の狭間で大きく揺れるファンの心理が非常によく分かる、生々しいやり取りだ。原作への思い入れが強ければ強いほど、その振れ幅が大きくなるのは自然なことだろう。
だが、よく分からない部分も少々ある。たとえば、先日アニメ版艦これへの参加が判明した吉野弘幸氏の過去に関わった作品が幾つか挙げられているが、そこに「DTB二期」(『DARKER THAN BLACK -流星の双子-』)も含まれている。
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当該作品は未見だが、Wikipediaによると吉野氏が担当したのは全12話中、第2話と第3話の二本のみのようだ。開始直後の重要な話数とはいえ、これだけの仕事によって一スタッフが一つのアニメ全体を「駄作」にすることなど、果たしてできるのだろうか。そんな芸当が本当に可能だとすれば、逆に吉野氏は恐るべき力を秘めた脚本家なのではないかという気もする。関わるだけでアニメを破壊する、アニメライターディケイド?
そして何より、アニメ艦これのシリーズ構成に決定している花田十輝氏についてだ。氏がシリーズ構成を務めたアニメの中で、わたしが通して見たことがあるものは残念ながら一作しかない。上の会話でも繰り返し話題に上がっている「ゼノグラ」(『アイドルマスター XENOGLOSSIA』)である。
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アイドルをプロデュースするゲームである「アイマス」を、ロボットアニメに大胆に翻案。ゲーム版からの声優の変更などもあり、原案ゲームファンの多くから強い反発を受けることになった作品だ。艦これアニメ化に際して、「原作のイメージ」を最重視するタイプのファンが引き合いに出すのも自然な流れだろう。そういう作品とメインスタッフが共通していることを危惧してしまう気持ちもよく分かる。
いや、申し訳ない。やっぱり分からない。正確に言えば、分からないでもないが分かりたくはない。
なぜなら、わたしは実際にXENOGLOSSIAを見て、このアニメは面白い、と感じたからだ。最後までブレることなく貫かれる、人間(ヒロイン)とiDOL(ロボット(厳密には違うが))の恋愛というテーマ。人間キャラクター達のみならず、物言わぬはずのiDOLの人格をも描き分け、感情の機微を表現したシナリオ。この作品を最後まで見た上で、花田氏の脚本家としての力量に疑問符を付けるのは少々難しいのではないだろうか。
まあ自分の場合、XENOGLOSSIAについても艦これ同様、原案ゲームの知識がほぼゼロのまっさらな状態で見ることができた*1という幸運もあるので、どれだけ評価しても原案ファンに対してはあまり説得力がないだろうが*2。仕方ないので、また別の話をすることにしよう。
実を言えば、自分にとって花田十輝氏は「ゼノグラの人」でさえない。氏とのファーストコンタクトであり、やはりゲーム原作のメディア展開でもあるとある作品の方が、個人的に強く印象に残っている。それはアニメ作品ではなく、ステレオドラマ『もっと!ときめきメモリアル』だ。
今ではすっかり下火になってしまったが、かつてゲーム業界を席巻した「恋愛シミュレーションゲーム」というジャンルのパイオニアとして知られる『ときめきメモリアル』。その一作目を、ラジオ番組内でサウンドドラマ化したものだ。原作の基本設定通り、才色兼備で恋愛における理想が馬鹿高い赤毛の幼なじみ藤崎詩織に告白されるため、主人公の高見公人が様々な体験を経て自分を磨いていくという内容になっている。シリーズ構成はかの「あかほりさとる」であり*3、あかほりさとる事務所に所属する花田氏は、全12話(放送4回で一話)の内、二話を担当している。その一つは最終話だ。
その内容がどんなものだったのかというと。
一途に詩織のために勉強・スポーツに励んでいた公人に、周囲の女の子からの評価が急上昇し、突然モテ始める。そうした状況に浮かれた公人だったが、詩織の気持ちを軽視したために、周囲の評価は一転して急降下し、悪い噂をされるようになる。
原作ゲームをプレイした人間ならピンと来るだろう。これは、高いパラメータにつられて他の女の子が大量に登場し好感度もぐんぐん上がるところまではいいが、彼女らを放っておくと勝手に傷心度を溜めて最終的には「爆弾」が爆発してしまう(学校中に悪い噂が流れて全攻略キャラの好感度が大幅に下がる)、という、攻略キャラ中最高難度を誇る詩織を狙ってプレイしている時に陥りがちな状況を再現したような展開だ。イベントなどの分かりやすくテキスト化されたストーリー部分だけではなく、このようなゲームとしてのプレイ感覚までも物語に取り込もうとする姿勢は、ゲーム派生作品の作り方としてお手本と言っても良いものだろう。花田十輝氏は、そのキャリアの初期からこのような志の高い仕事を残していたのだ。これで印象に残らないはずがない。
というのは完全な後知恵で、実際は、ドラマのエンドクレジットで公人役の小野坂昌也が読み上げる「ジュッキー、ハッナーダー」というエセ外人風コールが妙に耳に残っていただけだったりする。すんません花田先生。
ちなみに、この『もっと!ときめきメモリアル』は先行して発売された『CDドラマ ときめきメモリアル』(ややこしい)と世界観を共有している。その内容は、幼なじみ(ゲームの主人公≒高見公人、ということになる)に半ば愛想を尽かしかけている藤崎詩織が、全くのオリジナルキャラであるバスケの得意な主人公にかなり本格的によろめく*4という、現在の視点から見ると、すわディスク破壊か?と心配になるような内容なのだが、90年代はまだ人の心も穏やかだったのか、概ね好意的に受け止められていたようだ。当時ほぼ無名だった原作キャラの声優より、久川綾、緒方恵美、國府田マリ子と、オリジナルキャラのキャストの方が豪華な顔ぶれになってしまっているのも面白い。
……何の話だっけ。とりあえずまとめると。
・XENOGLOSSIAは名作
ということになるだろう。うむ、完璧だ。
ここで締めても何の問題もないのだが、最後に敢えて蛇足めいた話を付け加えると。
漫画なり小説なりゲームなりが他メディア作品の原作となった時、原作ファンは「そのまま素直にやればいいだけなのになぜできないのか?」といった不満をよく言う。しかし、仮に放送期間などの制限を抜きにしたとしても、異なるメディアで表現をする以上「そのまま」などというものはあり得ない。たとえ漫画からアニメという比較的近いメディア同士の間であっても、情報の変質というものは絶対に避けられないのだ。それでも小説や漫画のアニメ化であれば、少なくともプロットのレベルでは「そのまま」にすることもできるだろう。だが、これがゲーム、特に一貫したストーリーが存在しないタイプの作品を原作にする場合となれば、それさえも叶わない。
当たり前の話ではあるのだが、こういった前提さえ踏まえていない意見が何かしらのアニメ化のたびに一部の原作ファンから上がっているように見える。別に、「そのまま」など絶対にあり得ないのだから原作をどのように改変されても文句を言うな、ということではない。ただ、「空気感の再現」などといった漠然としたイメージではなく、原作の中の自分がどうしても譲れない最小限の要素、これだけ残してくれれば許せるという核を見切っておく必要はあるのではないかと思う。自分が本当は何を求めているのかさえ把握できていないのでは、アニメ化の質を云々する以前の問題だろう。そして、この「譲れない部分」は小さければ小さいほど良い。様々な形のアニメ化を柔軟に楽しむためには。
まあ、つい数年前まで『ブギーポップは笑わない Boogiepop Phantom』のような気合いの入ったアニメ化の価値を理解できていなかったわたしが偉そうに言えた義理ではないのだが……『魔装機神サイバスター』はまだちょっと許してない。何が「炎の魔装機神ジェイファー」だよ!
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