民法改正:債権分野、企業迫られる対応

毎日新聞 2014年09月02日 21時53分(最終更新 09月02日 23時44分)

最終案のポイントと暮らしへの影響
最終案のポイントと暮らしへの影響

 法制審議会(法相の諮問機関)の民法部会が8月、消費者や企業の契約ルールを定める債権分野の抜本的な改正に向けて最終案をまとめた。法務省は来年の通常国会への民法改正案提出を目指しており、成立すれば暮らしに影響がありそうだ。企業側も対応が求められる。【種市房子、朝日弘行、松倉佑輔】

 ■法定利率

 生涯の平均賃金が月額約40万円で、妻と子供1人を扶養している男性(27)が交通事故で死亡した場合、遺族が受け取る損害賠償額は5560万円から7490万円に1930万円増える−−。最終案を受け、日本損害保険協会はこう試算する。

 長引く低金利を受け、法制審は損害賠償額の算出に使う法定利率を現行の5%から3%に下げ、3年ごとに見直す方針を示した。賠償金は被害者が将来得られるはずだった収入の合計額から、法定利率に基づき、働けたはずの期間の収入の利息を差し引いて算出する仕組み。法定利率が下がれば賠償金は増える。

 一方、損害保険会社は支払う保険金が増え、保険契約者が払う保険料が値上げされる可能性がある。主要損保各社は今年すでに、消費増税によるコスト増などで保険料値上げに踏み切った。一段の値上げとなれば契約者が離れる恐れもあり、今後の動向を見極めて対応する構えだ。3年ごとの見直しも「システム変更のコストがかさむ」(大手損保)との懸念が出ている。

 ■保証人

 中小企業に対する金融機関からの融資で、経営者などを除く第三者が保証人になる場合、公証人の立ち会いなどを義務化する。安易に保証人になることを防ぐのが目的だ。

 保証人がいると融資の審査に通りやすくなり、金利も低くなるメリットがあるが、保証人になった人が多額の借金を負って破産するなどの弊害も指摘されていた。

 法務省は当初、第三者による保証を原則禁止する方針だったが、融資条件が厳しくなることを懸念した日本商工会議所などが反対。最終案では、公証人が保証人となる人の意思を確認し、公正証書を作ることを条件に認めた。中小企業庁は「中小企業の資金調達に大きな影響は出ない」としている。

 ■約款

 現行民法は約款に関する定めがなく、事業者と消費者の間でトラブルになっても、約款に同意したことを理由に消費者が泣き寝入りすることが多かった。

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