ストーカー:風俗業界の被害深刻 事情話せず苦悩

毎日新聞 2014年09月15日 07時30分(最終更新 09月15日 08時17分)

ストーカー事案で加害者側からみた被害者との関係
ストーカー事案で加害者側からみた被害者との関係

 ストーカー被害に遭いやすい上、被害を訴えにくい風俗など性産業従事者(セックスワーカー)のストーカー対策を支援する動きが出始めた。風俗業界で働く人たちへの支援の取り組みは珍しい。性産業従事者の安全と健康が守られる労働環境を目指す民間団体「SWASH(スウォッシュ)」(大阪)は17日、ストーカーに特化した当事者向けの質問会(相談会)を初開催し、今後は常に相談を受けられる体制作りに取り組むとしている。

 「写真をばらまくと言われた」「『人生をめちゃくちゃにしてやる』と脅された」

 2013年度、スウォッシュが風俗店への訪問や電話で受けた相談例だ。全体の1割ほどを占めたのが、ストーカー化した客についての相談だった。知らせていない自宅や最寄り駅で待ち伏せされたり、力ずくで連れ去られそうになったりするなど悪質なケースも含まれていたという。

 質問会では、ストーカーに関する相談を数多く受けているNPO「ヒューマニティ」(東京)理事長の小早川明子さんが講師役となり、ストーカーになりやすい客の見分け方や避け方を学ぶ。スウォッシュによると、性産業従事者の場合、業界への偏見や、同居の家族らに仕事が発覚することを恐れ、警察への相談をためらうケースが多いとされる。実際に被害に遭った従事者は勤務先を変えたり、転居を余儀なくされたりしているという。

 小早川さんもこれまで20件ほど性産業従事者からの相談に乗った経験がある。「信頼できる知人や弁護士などに間に入ってもらうといいが、危険が迫っている時には警察に知らせるべきだ。最近は警察も事情をくんで対処してくれるし、事情を話せば家族が理解してくれた例は多い。一人で悩まず相談してほしい」と助言する。

 スウォッシュは現在、スタッフの研修などを行い、相談員養成に取り組んでいるという。スタッフの一人の水嶋かおりんさん(31)は「仕事を周囲に隠している人はそれが弱みとなってストーカー被害に遭いやすい。性産業従事者への偏見や差別をなくすことも被害者支援につながる」と話す。

 質問会は17日午後2時から東京都内で。参加できるのは当事者だけで、会場は参加者に知らせる。申し込みはメール(mail.swash@gmail.com)へ。【藤沢美由紀】

 ◇前年比53%増

最新写真特集